インフラ設計で重要な「共用設計」とは? 干渉・取り合いの実務ポイントを解説 【自治体担当者様必見】
プロジェクトの加速化に寄与する「工期・高コスト」の壁を突破し、事業者間調整がスムーズに進む解決策をご紹介します。
現在、無電柱化事業最大のボトルネックとなっている「約7年の工期」「無電柱化1kmあたり約5.3億円の整備費用」。
これを解決するカギは既存通信設備(既存ストック)を活用したインフラ設計で重要な「共用設計」という手法にあります。
この「共用設計」による工期短縮・コスト削減の構想を地下構造物のプロであるメトロ設計が徹底解説。
インフラ設計の共用設計に欠かせない高い技術力、複雑になりがちなステークホルダーとの調整を完遂し、プロジェクトをより加速させる建設コンサルタントの知見をぜひご覧ください。
はじめに|無電柱化事業が直面する「時間」と「予算」の限界
現在、日本の都市部において無電柱化は、防災・減災、安全な歩行空間の確保、そして美しい景観の創出という観点から、喫緊の課題となっているインフラ整備です。
しかし、無電柱化事業の自治体担当者・現場担当者を悩ませるのが、「事業期間の長さと整備費用がネックで進まない」「電線管理者等、関係者との各種協議や合意形成をどう進めればいいのか分からない」という深刻な問題です。
一般的に、無電柱化の検討開始から電柱の完全抜去まで、平均して約7年の工期、費用は1kmあたり約5.3億円が必要と言われています。
従来の電線共同溝(C.C.BOX)方式では、ゼロから巨大な地下構造物を新設することが前提ですが、地下空間が過密な都市部では、この「新設」に伴う他埋設物移設こそが、工期長期化と費用増大の最大要因となっています。
本記事では、創業60年以上地下構造物設計に特化してきた建設コンサルタントの知見を活かし、この問題を打破するための切り札となる「既存ストック(設備)利用によるインフラ共用設計」の特徴や効果をご紹介します。
さらに、円滑な事業推進に不可欠な「関係者との合意形成」をキーワードに、事例を交えて詳しく解説します。
無電柱化プロジェクトに「工期」と「コスト」が必要な理由

予想外の結果が時間を要す「埋設物調査」と「試掘調査」
一般的に無電柱化の際には、対象道路区間の地中スペースにどのような埋設物がどのくらいの深さで配管されているかを初めに調べる必要があるため、まず設計の初期段階で「埋設物調査」を実施します。
※地下埋設物について詳しくはこちらをご覧ください。
埋設物調査(地中埋設物調査)とは?│調査方法から撤去まで詳しく解説
しかし、特に都市部では地下空間の至る所にインフラが輻輳しているほか、出所不明の埋設管、戦前から残る地下構造物、取り寄せた図面情報が古く現状と一致していないなど予想外の連続になることも多いでしょう。
その場合、不明確な部分は追加で試掘調査を行います。
・試掘調査: 地面を掘って埋設物を確認する作業で1年前後必要。
掘削する際事故などのリスクを避けるため、再調査により時間が必要な可能性がある
電線共同溝(C.C.BOX)の新設に立ちはだかる壁
現在の日本では、無電柱化に伴い「電線共同溝(C.C.BOX)」を設置する方式が一般的です。
※電線共同溝や設置の流れについて詳しくはこちらをご覧ください。
電線共同溝(C.C.BOX)とは|施工の流れ・メリットは?無電柱化の手法について詳しく解説
電線共同溝の設置に関しては、東京都で「電線共同溝整備マニュアル」を制定しています。
(参考資料:東京都電線共同溝整備マニュアル)
これにはガイドラインやフローが掲載されており、原則これに則り設計や工事を進めていきます。
しかし、電線共同溝の設置自体に大きな壁が立ちはだかっています。
例えば、
・インフラ業者との移設協議: 電線共同溝を設置する際に干渉する管を移設するための事業者協議。
ガス会社や水道局など、関連インフラ業者との調整が難航した場合実際の移設工事までに2〜3年かかることも
・限られた時間内での交通規制: 大規模な掘削を伴うため、昼間施工が困難な路線では夜間のみの短時間作業となり必然的に工数が数倍に増える
・周辺住民・店舗への対応: 騒音・振動による住民への説明や、店舗への営業補償問題が発生するため各種対応に追われる
など、新しい構造物を埋設するためには道路を大きく深く掘削する必要があることから、これらの問題が発生し着工後のスピードアップが難しくなっています。
事業者間の調整を図る「合意形成」の難しさ
電線共同溝の設置には電力事業者、通信事業者(インターネット、ケーブルテレビなど)、そして道路管理者の3者が事業者として該当します。
3者が一つの構造物に入るため、各自の安全基準やメンテナンス基準をすべて満たすよう意見をとりまとめ、設計に移る必要があります。
この「合意形成」が工期をさらに長期化させる一因となっており、このステップだけで1年以上の月日が流れることも少なくありません。
この調整が難航した結果、中には設計がストップするケースも見られます。
このように、前述したプロセスを完了するだけで様々な問題が起きるため事業期間7年のうち、約半分である3~4年を占める事もあり得るのです。
インフラ設計における共用設計がもたらすメリットと効果|4つの観点から解説

近年、こうした問題の解決策として注目されているのが、地下にすでに張り巡らされている「既存ストック」を活用する「共用設計」と呼ばれる方法です。
既存ストックの活用による「共用設計」とは
電線共同溝を新設する方式に対して、インフラの「共用設計」とは大手通信事業者が長年維持している管路、ハンドホールやマンホールなどの既存ストックを「借りる・加工する」思想の設計アプローチです。
無電柱化を推進している東京都においても「電線共同溝整備マニュアル」でこの手法を掲載しています。
各社専用の管路を個別に埋設する場合に比べて、狭い道路空間であっても多数の電線を効率的に収容可能であり、無電柱化のコスト削減や施工性向上を実現する事ができます。
ここでは具体的に4つの観点から既存ストックを利用することによるメリット・効果を詳しく解説します。
①【費用削減】支障移設の回避
本来、新しい電線共同溝(C.C.BOX)を設置しようとすると、干渉する既存ガス管や上下水道管を動かす必要があります。(=「支障移設」)
※支障移設について詳しくはこちらをご覧ください。
支障移転(支障移設)に関して
その場合、移設費用を自治体などの道路事業者が負担しなければなりません。
一方でハンドホールなど、昔から維持されている既存設備を活用する事で支障移設の必要がなくなるため数千万~数億円もの移設費用削減が可能とされています。
【効果】
・支障移設が不必要に: 既存のハンドホールを改修して使う場合、そこにはすでに他のインフラと干渉しないようスペースが確保されているため、周囲の管路を動かす必要が無くなる
・「負の連鎖」の遮断: 水道を動かすためにガスを動かし、今度はガスを動かすために下水を…という負の連鎖が起きないため、設計・施工の両面でコストが抑えられる
②【工期短縮】作業のスピードアップ
電線共同溝を設置するために道路を数百メートルにわたって深く掘削する作業が不要になり、着工から抜柱までの期間を30%〜50%短縮することが可能です。
【効果】
・掘削土量の削減: 既存設備を活用し、管路を浅く埋める「浅層埋設」を組み合わせることで、掘削する土の量を従来の約1/3程度へ減らす事ができる
・作業のスピードアップ: 巨大なコンクリート構造物を現場で打設したり、重いプレキャスト製品を据え付けたりする工程が減りスムーズな作業が期待できる
既存設備内での「加工」や「接続」がメインの作業となるため、1日あたりの進捗速度が格段に上がる
③【社会コスト削減】影響を最小限に抑える
都市部において、交通をストップさせるのは極めて困難です。
道路を全部掘るのではなく、必要最低限な部分で済むため全面通行止めや長期間の片側交互通行を回避でき、周辺住民や店舗への影響を最小限に抑えられます。
【効果】
・「点」での工事が可能: 道路を掘り進める「線」の工事から、既存ハンドホール周辺をピンポイントで作業する「点」の工事となるため、交通規制範囲の絞り込みが可能
・夜間作業の効率化: 限られた夜間作業時間内でもその日のうちに「掘削・接続・仮復旧」を終わらせやすく、無駄な待機時間や準備時間が減少できる
④【協議をスムーズに】道路管理者との協議円滑化
設計段階での大きな壁となるのは、道路管理者(警察や自治体)との「道路占用許可」に関する協議と言っても過言ではありません。
共用設計であれば「地下空間をこれ以上圧迫する事がない」という提案は、移設保証金の回避・将来の公共事業に向けたスペース確保を行いたい自治体にとって非常に魅力的です。
この利点によって合意形成が得られやすく、協議がスムーズに進みやすくなります。
【効果】
・地下空間の有効活用による利点の合致:
道路管理者は「地下の過密化」を嫌う
既存設備を共有利用するという提案は、将来の水道更新やガス工事用のスペースを残すことにも繋がるため、公共利益に合致し、行政側の決裁スピードが上がります。
公開資料に見る「共用設計」の成功事例と削減効果
ここからは、国交省の「無電柱化好事例集」および電力会社が公開している「無電柱化ベストプラクティス集」より、代表的な事例紹介を引き合いに、その具体的な解決策と効果を深掘りします。
【事例1】 既設電力管路を一部活用|道路管理者コスト削減、工期を6か月短縮
東京都板橋区での事例です。
防災を目的に、2004年~2010年に整備を行いました。
状況:すでに道路整備が完了している範囲のため、歩道部に電力管路が敷設されていた。
解決策: 歩道の電力管路を電線共同溝の一部として活用し、支障移設の回避につながった。
関係者との調整プロセス:道路整備による環境変化が起こることから、地元住民と道路管理者が生活環境・自然環境について対策を行い協議を重ねた。
数字による効果:既存ストック一部利用により支障移設にかかる土木工事費・移設補償費などの削減に成功。 従来と比較して、道路管理者のコストは10%低減、施工期間では6か月短縮することに成功した。
(出典:国土交通省「無電柱化好事例集」)
【事例2】 マンホール利用で支障移設回避|一体的工事実施で工期の3年短縮
沖縄県うるま市での事例です。
景観形成・観光振興を目的に、2019年~2023年に整備を行いました。
状況:既存埋設物を回避する予定であったが、工期の長期化により代替方法を策定中であった。
解決策:電力会社の既設管路、マンホールを利用し、干渉していたガス管・水道管の支障移設の回避につながった。
関係者との調整プロセス:うるま市の「勝連城跡周辺文化観光拠点整備基本計画」と足並みを揃えつつ、電力会社の変電所移設工事と協調する必要性があった。
数字による効果:電線管理者がすべての工事を一体的に実施することで道路管理者のコストは6%低減、施工期間は3年短縮に成功した。
(出典:沖縄電力「無電柱化ベストプラクティス集 )
上記2例から、電線共同溝設置方式と比べコスト・工期ともに大幅な削減ができていることが分かります。
しかしながら、無電柱化プロジェクトの成功に欠かせないのが難航しがちである移設協議など、「事業者間との調整・合意形成」を行う事です。
ステークホルダー調整:建設コンサルタントが果たすべき「真の役割」

ここまで、既存の通信ストックを活用したインフラ共用設計がいかに「工期短縮」と「コスト削減」に寄与するか、事例を交えて解説してきました。
しかし、これほどメリットがある方法なのに、なぜすべての現場では採用がされていないのでしょうか。
その答えは「事業者間の調整・合意形成」という目に見えないハードルが極めて高いことにあります。
事業者が抱える不安・悩みとは
共用設計では、道路管理者(自治体など)、電力会社、そして通信(キャリア)事業者の三者が関係者となります。
三者全員の同意を得られるように調整し、意見が一致する事で初めて次に進む事ができます。
例えばハンドホールという「大手通信(キャリア)事業者の財産」を共有する場合、まずキャリア事業者に納得してもらえる設計でなければいけません。
それぞれが以下のような懸念を抱くでしょう。
通信事業者
・他社が入ることで自社の設備に事故は起きないか
・将来、自社内で検討している増設スペースが減る事にならないか
電力事業者
・重量がある電力ケーブルを古い構造物に収容して強度は大丈夫か
・万が一、火災や漏電事故が起きたときの責任はどうなるか
道路管理者
・通信・電力という民間企業の貸し借りに関与して、将来の道路管理に支障が出ないか
これらの不安や疑問を解消しない限り、全員が納得のいく調整は図れません。
大手の「詳細設計」を担う当社だからできる、手戻りゼロの調整
ここで、私たち建設コンサルタントの「真の価値」が問われます。
既存設備活用によるインフラ設計で重要な共用設計成功の鍵は、単なる交渉力だけではなく、「一回で納得してもらえる設計図面」を最初から出せるかどうかです。
メトロ設計は以下を強みとしています。
・実績豊富な建設コンサルタントであることを証明する技術力
当社は、東京都および大手通信キャリアからの発注である設計業務を長年請け負っており実績豊富です。
この実績は私たちがプロフェッショナル集団として、通信事業者が守るべき内部基準やポイントを、隅々まで熟知していることを示す証です。
・キャリア会社を納得させる事ができる視点を持っている
通常、道路事業者となる自治体が「既存ハンドホールを使いたい」と通信事業者に相談しても、「安全性が担保できない」「自社ルールに適合しない」と断られるケースが多く見られます。
しかし、キャリア会社の内部設計ルールを熟知しているため、整合性と納得性を持ち認証をパスできる設計図の提示が可能です。
・専門用語と内部ルールに基づいたスピーディな交渉
この設計であれば安全、という根拠を、キャリア独自の専門用語や内部ルールに則って合理的に説明できるため、担当者の確認の負担や工数を大幅に下げることが可能です。
この知識や相手を知り尽くした交渉こそ、事業者間協議のスピードを他社とは比較にならない速さで進めるポイントです。
まとめ:スムーズに無電柱化プロジェクトを動かす相談はメトロ設計へ

無電柱化は、単なる電柱の撤去ではなく、100年先を見据えた「街の地下インフラを最適化する事業」です。
本記事で解説した通り、既存の通信インフラを最大限に活用する「共用設計」は、現代の日本において工期と費用の問題を解決策となる、最も現実的な選択肢です。
しかし、これを成功させるには、高度な構造設計の技術はもちろん、それ以上に「関係事業者を納得させ、合意へと導く実務的な調整力」が欠かせません。
地下構造物設計に特化した当社の無電柱化チームが、責任を持って貴社のプロジェクトに価値を提供します。
・地下空間の最大活用:
既存設備を「上手に活かす」ことで、大規模な埋設物移設を回避し、圧倒的なコスト削減を実現します。
・合意形成の加速:
技術的な裏付けを持って、自治体・電力・通信の間に立ち、複雑な占用協議を最短で完遂させます。
・キャリア基準の体現:
大手通信事業者の詳細設計を担う立場から、手戻りのない正確な共用設計図を作成します
【自治体ご担当者様へ】|ご相談は地下構造物の設計から「合意形成」まで、ワンストップで伴走可能なメトロ設計へ
自治体ご担当者様へ
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私たちは、大手通信事業者のパートナーとして地下を設計し、インフラの未来を描くプロフェッショナル集団です。
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※無電柱化に関するブログ記事はこちら
再開発の無電柱化はCIMで制す|工期短縮・費用抑制の電線共同溝設計【デベロッパー必見】
日本における無電柱化のあゆみと政策背景|これからの整備の方向性
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長年の知識を生かしたマネジメントで、住民の方と施工事業者との架け橋となるような、建設コンサルタントを目指しています。
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