青焼き図面からkintoneへ| メトロ設計が進めてきた現場DXと業務改善

公開日 2026.7.28
更新日 2026.7.31
建設・設計業界では、紙図面や押印、Excelによる個別管理など、業界特有の業務慣行がDXを進めるうえでの壁になりがちです。

メトロ設計では、青焼き図面の時代からCADの導入、通信・セキュリティ環境の整備、kintoneと自社システム「MARS」の活用へと、段階的に業務改善を進めてきました。

本記事では、それぞれの時代にどのような課題があり、現場の業務に合わせて仕組みを更新してきたのか、当社の取り組みをご紹介します。


はじめに | 6つの事業を支える、当社の情報システムの歴史


メトロ設計は、上下水道や電線共同溝、鉄道施設設計など、地下インフラに関わる更新や新規設計を通じて、社会インフラを支える事業を展開しています。

それぞれの事業を円滑に進めるためには、社内の情報システムを整えて、設計データや工程を正しく管理することが欠かせません。

しかし、現在のクラウド環境を活かした情報システムの運用や、効率的なデータ統合にたどり着くまでには、数々のハードルを乗り越える必要がありました。
特に過渡期においては、取引先である官公庁や役所とのやり取りで、業界特有の「紙の書類や押印」という慣習に対応しながら、いかにペーパーレス化や業務効率化を進めるかが、情報システムを構築する上での大きな課題でした。


この記事では、当社の情報システムが歩んできたプロセスを「創業期」「過渡期」「DX推進期(現在)」の3つのステップに分けてご紹介します。

設計・建設業界でDX推進を担当している方や、「社内に眠る紙図面やデータの整理からどう始めればいいか」を模索している企業にとって、現場主導で進める業務改善のヒントになれば幸いです。


創業期 | 図面のCAD化とエクセル管理の課題


業界に先駆けた図面の電子化とCAD導入


メトロ設計は創業から63年に渡り、地下構造物の設計に特化した建設コンサルタントとして歩んできました。

創業当時はまだパソコンがなく、手書きの図面を薬品と光で複写する「青焼き」を行っていました。
図面を1枚コピーするだけでも多くの時間と手間がかかり、 「図面管理や社内での情報共有がスムーズに行えない」という課題を抱えていました。

このような環境においても、当社は新しい技術を業務に取り入れることを重視してきました。
そのため、設計業界の中でもかなり早い段階から、手書きの図面をデジタル化してパソコンで設計を行う「CADシステム」を導入しました。

この早期のCAD化による図面の電子化が、現在の当社の情報システムを構築する上での最初の基礎となっています。

エクセルを使った手動集計の限界とデータ管理の難しさ



図面のデジタル化が進む一方で、社内の売上進捗管理や原価管理といった経営情報の集約には、長年エクセルを使用していました。

当時のエクセルは主に単純な計算や表作成のために使われており、現在のようにリアルタイムでデータを共有したり、一元管理したりする機能はありませんでした。

そのため、蓄積された業務データは最終的に担当者が手作業で集計するしかありませんでした。
このように人の手で情報を更新する運用には、データの転記ミスや入力漏れが発生しやすく、数値の正確性を保つことが難しいという課題がありました。

また、最新の進捗状況をリアルタイムで把握できないため、目標値と実績値にズレが生じ、正確な経営状況を把握しにくくなるという問題も抱えていました。

事業規模が拡大するにつれて、この手動によるデータ管理の限界を克服することが、情報システムを刷新する上での急務となりました。

創業期に直面した「手動集計による数値のズレ」という課題と、それを解決しようとした当時の模索こそが、現在当社が進めているシステム内製化やデータ統合に向けた取り組みの、確固たる出発点となっています。


過渡期 | インフラの変化と官公庁取引の課題


電子入札への移行と通信環境の整備



インターネットが普及し始めたことにより、ビジネスのインフラは大きな変化を遂げてきました。
特に当社の主要業務である官公庁の入札手続きが電子入札へ移行したことは、業務の進め方における大きな転換点となりました。

当時は、電子入札システムへ確実に対応するための安全なネットワーク構築や、業務に支障が出ない安定した通信環境の整備が急務であるという課題を抱えていました。

情報システム部門では、これらの通信インフラを段階的に整えることで、オンラインでの入札業務を安全かつ確実に行える環境を構築しました。

民間とのペーパーレス化と押印手続きのギャップ



近年、民間企業を中心にクラウドサインなどの電子契約サービスが普及し、ペーパーレス化やハンコレス化が大きく進んでいます。
当社でも、外注先である民間の協力会社様との取引においては、すでにペーパーレス化を完了し、業務の効率化を図っていました。

しかし、官公庁や役所との取引においては、手続きのデジタル化が進みにくいという現実がありました。
東京都など、自治体によっては一部押印不要の手続きが増えつつあったものの、重要な契約書類は依然として紙ベースでの管理が主流となっていました。

民間企業ではハンコレスが進む一方で、官公庁案件の多い当社では押印手続きを省略できず、ハンコを押すためだけに出社しなければならないなど、業務の効率が低下してしまうことが課題でした。

この時期に経験したアナログとデジタルのギャップが、のちに場所を選ばずに働ける環境づくりや、システム内製化による抜本的な業務改善を目指す強いきっかけとなりました。

紙とデジタルが混在する中での情報セキュリティ対策


また、紙の書類とデジタルデータが混在する環境下では、情報の紛失リスクや管理方法の複雑化という新たな課題も生まれました。
そこでメトロ設計では、情報セキュリティの国際規格である「ISO27001(ISMS)」を取得し、厳しい基準に沿った安全な情報管理体制を整えました。

具体的には、紙の契約書を鍵付きのキャビネットで厳重に保管する物理的な運用と、パソコン内の共有データのアクセス権限を細かく制限するシステム的な運用の両面を徹底しました。

この過渡期に構築した強固なセキュリティ基盤と運用ルールが、現在のフリーアドレスやテレワーク、そしてkintoneによるデータ活用を安全に行うための確固たる前提条件となっています。


DX推進期 | 働き方の多様化とシステム内製化による効率化



フリーアドレス化とテレワークを支える社内環境の整備


過渡期における通信インフラの整備やセキュリティ対策を経て、
現在のメトロ設計では、「社員が働く場所を自由に選択できるフリーアドレス(ABW)や、テレワーク」を本格的に導入しています。

この新しい働き方を社内で実現するために、情報システム部門ではオフィスのネットワークをすべて無線LANへと移行しました。
また、社外からでも安全に基幹システムへアクセスできる環境を整え、オフィスにいなくても滞りなく業務を進められる体制を構築しました。

テレワークを導入する上で特に課題となったのが、社内に保管されていた膨大な専門書籍や技術資料の取り扱いでした。

これに対しては、大手ベンダーのノウハウを活用して書籍の電子化を推進しました。
これにより、自宅や外出先からでも必要な資料をパソコン上で閲覧できるようになり、在宅勤務時における業務効率を大幅に向上させることができました。
このように「社内資料や図面をデジタル資産として整理したこと」こそが、のちにkintoneや自社システムでデータを統合していくための確固たる土台となりました。

kintoneと自社システム「MARS」によるプロジェクト管理と原価管理の効率化

かつて創業期から続いていた「手動でのエクセル集計」という課題を根本から解決するために、現在は業務改善プラットフォームである「kintone」と、自社で独自開発している基幹システム「MARS」を活用しています。

当社が既製品のパッケージシステムをそのまま導入するのではなく、システムの内製化にこだわったのは、現場の業務プロセスに合わせた柔軟な改善をスピーディーに行うためです。

一般的なシステムでは当社の複雑な業務にフィットしきれず、かえって現場の負担になるという課題がありました。

そこで自社で開発・改修を行える体制を整えたことで、現場からの要望に対して情報システムの担当者が素早くシステムをアップデートできるようになりました。

現在は、展開する6つの事業すべてにおいて、プロジェクトの進捗管理やそれにかかる費用の管理(原価管理)を、MARSとkintoneを使って行っています。
データがシステム間で自動的に連携されるようになったことで、エクセル時代のような二重入力の手間や集計ミスが解消されました。

これにより、数値のズレに悩まされることがなくなり、正確な実績をリアルタイムで把握できるようになりました。

事務作業にかかる時間を大幅に削減し、当社の本質であるインフラ設計業務により多くの時間を投資できる、業務生産性の飛躍的な向上を実現しています。

社内AIコンテストから生まれた独自の安否確認システム

また、当社では既存の業務システムを改善するだけでなく、新しいIT技術を積極的に活用する風土づくりにも取り組んでいます。

その一環として、社内で「AIコンテスト」が開催されました。
最新の技術をどう業務に活かすか、また、どうやって社内全体のITに対する関心を高めるかという課題に対する、新しいアプローチとなっています。

このコンテストのプロジェクトの中から、実際に社員の手によってメトロ設計独自の「安否確認システム」が開発されました。
このシステムは災害が発生した際に、全社員の安否状況をシステム上で迅速に集計・確認できる仕組みです。

実際に大きな地震が発生した際にはいち早く安否が確認でき、社員の無事や被害の有無、支援に回ることが可能か、など社内全体のBCP対策に大きく寄与しています。

ただ外部のシステムを購入するのではなく、必要なツールを自分たちの手で企画して形にする取り組みは、社員の技術的なスキルを高めるだけでなく、社内のIT全般に対する関心を高める良い機会となっています。

ここで培われた開発のノウハウと主体的に行う姿勢が、将来的な当社のシステム運用を支える確固たる力となっています。


変化する業務プロセスに合わせ、システムの改善を継続します


この記事では、メトロ設計が自社内で進めてきた情報システム整備と業務改善の歩みをご紹介しました。

当社では、建設・設計分野で長年図面を扱ってきた経験を活かし、主に次のようなご相談に対応しています。

・青焼き図面や紙図面のスキャン・PDF化
・社内に保管されている図面や技術資料の整理・データ化
・PDF化とCAD化のどちらが適しているかのご相談
・大量の紙資料をデータ化する際の進め方や見積もり
・古い図面や書類を、検索・共有しやすい状態に整理するためのご相談
・「社内に大量の図面があるが、どこから手をつければよいか分からない」
・「まずは一部の資料からデータ化を試してみたい」


といった段階から、お気軽にお問い合わせください。
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暮らしに密着した社会資本を整備する、専門家集団です。
わたしたちは60年に渡り、社会資本の施工事業者のパートナーとして現地調査・計画・設計等に専心してまいりました。
長年の知識を生かしたマネジメントで、住民の方と施工事業者との架け橋となるような、建設コンサルタントを目指しています。
無電柱化や電線共同溝、道路、上下水道、地下鉄など、地下インフラの整備は弊社へお任せください。どうぞお気軽にご相談くださいませ。