ホームドアのしくみは?設置計画の立て方や種類、工事の流れまで詳しく解説

公開日 2024.10.29

本記事ではホームドアの種類や設置の流れについて詳しく解説します。
可動式、昇降式、フルスクリーンタイプのそれぞれの特徴など、鉄道の安全性と利便性を高めるホームドアについて学びましょう。


はじめに

ホームドアが安全性や快適性の向上にどれほど貢献しているか、考えたことはあるでしょうか。
公共交通の利用が増える中で、事故防止や混雑の緩和はますます重視する必要のある課題となっています。

本記事では、ホームドアの種類やそれぞれの特徴、導入の流れを分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、可動式、昇降式、フルスクリーンタイプなど、さまざまなホームドアの違いや、それぞれに適した設置環境、さらに設置工事の進め方についてもご紹介します。

ホームドアに関する知識を深めることで、駅での安全性向上がより身近に感じられるでしょう。
ぜひ最後まで読み、ホームドアがもたらす利便性と安全性を確認するとともに、周囲の駅の取り組みにも目を向けてみてください。





ホームドアとは?

ホームドアは、駅のホームと列車の間に設置される安全設備で、乗客の転落や接触事故を防ぐ役割を担っています。
ホームドアは、列車の乗降口に合わせて開閉し、乗客が安全に乗り降りできるような働きがあり、ホーム上の混雑を緩和し、列車の運行をスムーズにする効果もあります。

ホームドアの整備が進んだ背景には、都市部の駅における安全性の向上や列車遅延防止への対策があります。

特に混雑が激しい駅では、列車との接触事故を防ぐため、導入の必要性が高まりました。
初めてホームドアが導入されたのは1991年、東京メトロ南北線の一部駅(駒込~赤羽岩淵駅間)です。
その後、他の地下鉄や都市鉄道にも広がり、現在では多くの路線で標準的な設備となっています。

今後も、安全性の向上に加え、バリアフリー対応の観点からさらなる普及が期待されています。


ホームドアの種類

ホームドアにはいくつかの種類があり、駅の環境や運行形態に合わせて選ばれます。
それぞれの種類には特徴があり、各鉄道事業者が目的に応じてホームドアを導入することで、安全性と利便性を向上させています。

本項目では、代表的なホームドアの種類を紹介し、それぞれの特徴や導入に適した条件について詳しく解説します。


可動式ホーム柵

可動式ホーム柵は、列車のドアに合わせて自動で開閉する仕組みを持つホームドアです。
主に通勤電車や地下鉄など、ドアの位置が統一されている路線で多く使用されます。
このタイプのホーム柵は、設置が比較的導入しやすく、工事費用や期間を抑えやすいのが特徴です。
そのため、新設駅だけでなく、既存の駅への導入も比較的簡単に進められます。

ホーム全体を覆わず、必要な箇所だけを囲むため、駅の景観に配慮しつつ安全性を確保できるのも利点の一つです。
ただし、異なる車両が運行される路線では、すべての車両への対応が難しく、導入が制限される場合があるというネックがあります。
そのため、運行する車両の種類やドア位置の統一が重要な条件となります。


昇降式ホーム柵

昇降式ホーム柵は、ホームドアの一種で、列車の到着時に柵が下がり、発車後に再び上昇する仕組みを持っています。
このホームドアは、特に異なる種類の車両が走行する路線や、ドアの位置が車両ごとに異なる場合に用いられることが多いです。
固定された位置に扉がないため、運行の柔軟性を高められるというメリットがあります。

昇降式ホーム柵は、ホーム全体を囲む必要がなく、開放感を維持しながら安全性を確保することができます。
また、設置スペースが限られている駅や、車両の長さが異なる路線での導入に適しています。
しかし、設置には複雑な機械構造が必要となり、可動部分が多いためメンテナンスが欠かせません。
そのため、運用コストが比較的高くなる傾向があります。


フルスクリーンホームドア

フルスクリーンホームドアは、ホームと列車の間を全面的に仕切るタイプのドアです。
この形式は、ホームから線路を完全に遮断するため、安全性が非常に高い点が特徴です。
ドアが床から天井まで設置されることで、転落事故や列車との接触事故に高い効果があります。
主に地下鉄や空港連絡鉄道など、混雑しやすく高い安全性が求められる場所で導入されています。

フルスクリーンタイプは、外部の風や騒音も遮断でき、さらに冷暖房効率や省エネ効率も高いため、乗客にとって快適な環境を作ることができます。
ただし、構造が複雑であり、設置コストが高いため、導入には慎重な計画が必要です。

この形式のホームドアは、車両のドア位置が一定であることが条件となるため、導入する路線を選びます。
運行する列車の仕様が統一されている場合に適しており、安全性と快適性の両方を高める効果が期待されます。


ホームドアを導入するには

ホームドアを導入する際には、事前に詳細な検討や調査が必要です。
まず、安全性や運用効率の向上を目的とした設置計画が立案され、導入に適した駅や路線が選ばれます。
導入の可否を判断するため、各駅の利用状況やホームの幅、車両の仕様など、さまざまな条件を考慮する必要があるでしょう。
本項目では、ホームドアを導入するまでの具体的な流れについて解説します。

引用:TOKYO METRO NEWS(メトニュー)|東京メトロ


ホームドアの導入を検討している駅の事前調査

ホームドアを導入するには、まず駅ごとの条件を把握するための事前調査が欠かせません。
具体的には、ホームの幅や構造、利用者数、混雑のピーク時間帯といったデータが重要な判断材料となります。

また、列車の運行本数や車両の種類、ドア位置の統一性など、鉄道の運行形態に関する情報も調査対象です。

さらに、ホームにおける安全対策の現状を確認し、転落事故のリスクや混雑の度合いがどの程度かを評価します。
ホームドア設置の必要性とその効果を具体的に見積もられます。
また、ホームがバリアフリー対応であるかどうかも考慮し、視覚障がい者などに配慮した設計が求められます。
こうした調査結果をもとに、駅の特性に合ったホームドアのタイプや設置の可否が判断されます。


導入するホームの状況からタイプを選定する

ホームドアを設置する際には、各駅の状況に合わせたホームドアのタイプを選ばなければなりません。
ホームの幅、長さ、構造、そして利用者数などが、どの形式のホームドアを導入するかに影響します。
たとえば、狭いホームでは可動式ホーム柵が適している一方、広く混雑するホームではフルスクリーンタイプが効果的です。

さらに、運行する列車の種類や車両のドア位置も選定に必要な要素です。
異なる種類の車両が走る路線では、ドア位置に柔軟に対応できる昇降式ホーム柵が選ばれるでしょう。
一方で、車両の種類が統一されている路線では、可動式やフルスクリーンのドアが効率的な選択となります。

また、設置に伴う工期やコストも考慮されます。
工事期間中の運行への影響を最小限に抑えるため、夜間や列車の運行が少ない時間帯に合わせて工事が行われます。
各駅の状況を詳細に調査し、それに基づいたタイプを選定することが、安全かつ円滑な導入を実現するために必要不可欠です。





ホームドアを設置するまでの流れ

ホームドアの設置には、計画から工事完了まで長期間に渡り工事が行われます。
工事は、支障物の処理やホームの補強から始まり、設置準備へと進みます。
設置後にはケーブル配線やシステムの動作試験が行われ、すべての工程が正常に完了したことを確認してから運用が開始されます。
工事全体の期間は、駅ごとの状況によって異なりますが、数か月から1年程度が一般的です。
この項目で、実際の工事の流れについて解説しましょう。

(1)ホーム下の支障物を処理する

ホームドアの設置に向けて、最初に行う工程は、ホーム下にある支障物の処理です。
主に通信ケーブルや電力ケーブルなどがホームの下に張り巡らされており、設置の障害となる場合、移設や再配線が必要となります。
そうすることで、ホームドアの設置に十分なスペースを確保します。

支障物の移動には、既存設備との干渉を避けるため、詳細な計画が欠かせません。
特に列車の運行に支障をきたさないよう、夜間や運行本数が少ない時間帯に作業が行われることが一般的です。
また、安全を確保するため、施工前には関係する配線の電源を遮断するなど、慎重な準備が求められます。

この工程を正しく行うことで、ホームドアの設置がスムーズに進み、運用開始後のトラブルを防止します。

(2)ホーム補強

ホームドアを設置するには、その重量に耐えられるよう、ホーム自体の補強が必要です。
特にフルスクリーンタイプのホームドアでは、強固な支柱やベースが求められるため、ホーム全体の耐久性を高める工事が欠かせません。
補強工事は、設置後の安全性と耐久性を確保するためには必要不可欠です。

この工程では、コンクリートの打ち直しや鉄筋の追加が行われる場合もあります。
特に古い駅では、老朽化した部分を修繕し、新たな設備に対応できるよう改修しなければなりません。
また、設置場所の環境に応じて、振動や地盤への影響も考慮し、ふさわしい補強が施されます。

この工程も、列車の運行に支障を出さないよう、深夜や運行の少ない時間帯に作業が進められます。

(3)ホーム設置準備

ホームの補強が完了した後、実際のホームドア設置に向けた準備が行われます。
この段階では、設置する機材やドアパネルの搬入、固定場所の測定といった作業が中心となります。
各パーツの位置や高さをミリ単位で正確に調整し、列車とドアのズレが生じないよう慎重に進めます。

ホームドアは1枚ごとの大きさがあり、重さも約500~680kgと非常に重いため、駅の入り口からホームまで運び込むのは容易ではありません。
そのため、ホームドアは車両基地で電車に積み込み、設置予定の駅まで運ぶという特殊な方法が取られています。
この際、使われるのは工事専用の車両ではなく、通常の乗客を乗せる列車です。積み込まれたホームドアは、手すりなどにロープで固定され、安全に運ばれます。

また、ホーム上での作業には、乗客の安全を確保するための対策も重要です。
作業中の立ち入り禁止区域を設けるほか、電光掲示板やアナウンスを使って乗客へ分かりやすい案内を行います。
設置作業の進行状況に応じて、一時的に列車の運行スケジュールが調整されることもあります。

さらに、配線用のダクト設置や電源の確保も同時に進められます。
ホームドアの設置は、精密な調整と多くの工程を必要とするため、効率的なスケジュール管理が欠かせません。
そうすることで、予定通りの導入完了が実現し、安全でスムーズな運用開始が可能となります。

(4)ケーブル配線・動作試験

ホームドアの設置が完了すると、次の工程としてケーブルの配線とシステムの動作試験が行われます。
ホームドアの制御には電力供給や通信ケーブルが必要であり、配線が正しく接続されているかどうかの確認が重要です。
配線は列車の運行に干渉しないよう、地下や壁内のダクトを利用して敷設されます。

配線が完了した後、動作試験が実施されます。
この試験では、ホームドアの開閉がスムーズに行われるか、列車の到着と同期して正確に動くかを確認します。
また、非常時に備えた緊急停止システムや、ドアのセンサーが正常に作動するかも入念にチェックされます。
それによって、予期せぬトラブルを未然に防ぎ、安全な運用を確立します。

動作試験の結果に基づいて、必要に応じて調整や修正が行われます。
すべてのテストが完了し、正常に稼働することが確認された段階で、ホームドアの運用が正式に開始されます。
この工程を経ることで、乗客にとって安全で快適な環境が生まれるのです。





まとめ

ホームドアは、安全性と利便性を向上させるため、鉄道の重要なインフラとしてますます普及が進んでいます。
可動式、昇降式、フルスクリーンなど、さまざまなタイプがあり、駅や路線の条件に合ったものが導入されています。

ホームドアの設置には、支障物の処理やホームの補強、設置準備、配線および動作試験など、複数の工程が必要です。
各過程を慎重に進めることで、運用開始後のトラブルを防ぎ、円滑に運行することができるでしょう。
特に設置中も列車の運行が継続されるため、工事の進行管理と安全対策が重要です。

この記事で紹介したように、ホームドアは乗客の安全を守り、運行の効率化を促進する重要な設備です。
今後も各鉄道事業者で導入が進むことが予想され、さらなる安全性と快適性の向上が期待されます。

メトロ設計では、専門のスタッフが丁寧に対応し、最適な解決策をご提案いたしますのでお気軽にお問い合わせください。

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暮らしに密着した社会資本を整備する、専門家集団です。
わたしたちは60年に渡り、社会資本の施工事業者のパートナーとして現地調査・計画・設計等に専心してまいりました。
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