水道管工事とは?工事の内容や目的・基本的な流れについて詳しく解説
水道管工事は、安全で安定した水供給を目的として行われる重要なインフラ整備です。
この記事では、水道管工事の基本的な内容、目的、そしてその流れについて詳しく解説します。
水道管工事とは?
水道管工事は、家庭やビル、公共の施設へ安全で清潔な水を供給するためのライフラインを維持・更新することを目的としています。
水道管が整備されていることにより、日々の生活用水はもちろん、消火活動や公衆衛生における基本的なニーズに応えることが可能です。
この工事を通じて、水道管の漏水や老朽化による問題を防ぎ、常に安定した水供給が行えるようにするため、計画的な管理と適切な技術が求められます。
水道管を布設する目的とは
水道管工事とは、配水管を用いて各家庭や施設に安全で清潔な水を供給するための基本的なインフラ整備です。
配水管の主な目的は、浄水された水を効率良く、かつ安全に消費者の元に届けることです。
具体的には、配水場または浄水場内の配水池から出た水を市街地や住宅地の各家庭に送り届けるために、口径の異なる配水管が数百キロメートルにわたって地下に埋設されています。これにより、家庭用の水だけでなく、消防用水や公衆衛生に必要な水も確保できるのです。
配水管の設計には、水の流れや圧力を最適化する工夫がされており、一定の水圧を維持するために配水塔やポンプが利用されます。
また水が配管内で滞留することを防ぐために、配水管は原則として網状に布設。
さらに、水道の配管には配水管以外にも導水管や送水管があります。
導水管は主に原水を浄水場へ送るために使われ、送水管は浄水場から配水場へ清水を送る役割を担います。
最終的に私たちの家庭に届く水は、さまざまな段階を経て安全が確保され、供給されています。
水道管工事(管工事)と水道施設工事の違い
水道管工事(管工事)と水道施設工事は、どちらも水道システムの設置やメンテナンスに関わる重要な工事ですが、その対象となる範囲には大きな違いがあります。
水道施設工事は、主に公共団体が管理する取水場、浄水場、配水施設、および下水処理施設などのインフラを構築・改修する工事を指します。
これらの施設は、広範囲にわたる水の供給や処理を担うため、都市や地域の水道システム全体に影響を与える大規模なプロジェクトが多いです。
水道施設工事には、大量の水を安全かつ効率的に処理・供給するための高度な技術と広範な計画が必要です。
一方で管工事は、具体的には一般の住宅や店舗などの個別の建物内での水道管の設置や修繕を行う工事を指します。
管工事は、公共の水道施設から個々の建物に水を供給するための配管を設置する作業であり、建物ごとのニーズに合わせて管径や材質を選定し、効率的な水の流れを確保します。
このように、水道施設工事が公共の大規模インフラに焦点を当てるのに対して、管工事は個々の建物の具体的な水の利用を可能にするためのものであり、そのスケールと対象が大きく異なります。
水道管工事の流れ
水道管工事は、都市のライフラインを維持・改善するために必要不可欠です。
水道管工事には、既存の古い管の入れ替えや新規設置など、さまざまな工程が含まれています。
特に、古い水道管を新しいものに交換する場合は、多くの手順と注意が必要です。
ここでは、そのような水道管工事の一連の流れを詳しく見ていきましょう。
(1)試掘
水道管工事の初期段階である試掘により、地下に埋設されている水道管だけでなく、電気、ガス、電話などの他のインフラも含めて、その正確な位置や状態を把握できます。
新しい管を設置する際の最適な位置決めが可能となり、計画的で効率的な工事進行が期待できます。
試掘工程では、計画された工事区間内で標準的に10箇所、多い場合は20~30箇所の点を選んで掘削します。
各掘削点での深さは1~2メートル程度であり、1日に3箇所を目安に作業が進められるため、全ての試掘を完了するには約7日間を要することが一般的です。
この段階で地下の状況を正確に把握することにより、後続の工程で予期せぬ障害に遭遇するリスクが減少し、効果的な工事計画の立案が可能になります。
(2)仮設管設置
仮設管設置は既存の水道管を更新または修理する際に、断水を避けて住民の日常生活に支障を来さないように行われる重要な工程です。
この工程では、古い水道管の機能を一時的に代替するために仮の管(仮設管)が設置されます。
仮設管の主な役割は、本管の修理や交換作業中にも、水供給を継続的に行うことです。
工事中、本来の水道管からの水の流れを一時的に停止させ、代わりに仮設管を通じて水を供給します。
これにより、地域住民や施設への影響を最小限に抑えつつ、必要な工事を安全かつ効率的に実行することが可能となります。
仮設管の設置には、精密な計画と迅速な実行が求められます。
工事区間ごとに仮設管を布設し、各家庭や施設に水が正常に供給されるように調整します。
仮設管が機能している間、本管の修理や交換が行われ、新しい管が設置された後で、再び本管に水の供給が切り替えられます。
(3)仮設給水切替
仮設給水切替は、既存の本管から仮設管へ水の供給を切り替える作業を指します。
仮設給水切替は、まず各家庭や建物につながっている給水管を、新しく布設された仮設管に接続します。
主に制水弁と呼ばれるバルブの調整が含まれ、これにより水の流れを旧本管から新しい仮設管へと効率的に切り替えができます。
この切り替え作業は、水質の安全性を保ちながら行う必要があるため、消火栓や排水口を通じて水質状況を確認しながら慎重に進められます。
この工程では、重機を使用することはなく、バルブ操作による切り替えのみで進行します。
切り替えの所要時間は、作業の複雑さや対象エリアの規模により異なりますが、早い場合で2日程度、長い場合には1ヶ月ほどを要します。
(4)既設管撤去
既設管撤去では仮設給水の切り替えが完了し、新しい管が正常に機能していることを確認した後、古い水道管を安全に撤去します。
既設管撤去には、地域の水供給システムに対する深い理解と精密な計画が必要です。
既設管の撤去方法には、主に開削工法と非開削工法があります。
開削工法は、地表を掘り開けて直接古い管を取り出す方法で、作業の進行が直接視覚で確認できるため、精度が要求される場合に適しています。
一方非開削工法は、地表を大きく掘削することなく古い管を撤去または修復する技術で、環境への影響が少なく、周囲の交通や生活に与える影響を最小限に抑えることが可能です。
(5)新設管設置
新設管設置は、古い水道管の撤去後に行われる重要なステップです。
この段階で、新しい耐震性の高い管を地下に設置し、地域の水供給システムを大幅に更新します。
新設管の設置は、日々の水需要に応え、将来の地震などの自然災害に対しても強い耐性を持たせるために不可欠です。
新設管の設置作業は、一般的に掘削された溝に沿って進行します。
掘削の幅と深さは、設置される管の径によって異なりますが、通常は幅60〜80cm、深さは1.2m程度です。
しかし管径が大きくなるほど、幅は1.0〜2.0m、深さは1.5〜3.0mに達し、場合によっては5m以上の深さを掘ることもあります。
毎日の作業進行は、現場の条件により異なりますが、標準的には6~15m程度の新設管が布設されます。
(6)給水切替
全ての新しい本管が正しく設置され、その機能が確認された後に、各家庭や施設への水供給の接続が行われます。
給水切替の主な目的は、既存の仮設管から新しく設置された耐震管に給水管を接続し直すことです。
これにより、安全で持続可能な水供給インフラへとシステムが更新されます。
作業は、制水弁や接続部の調整を含む精密なプロセスを伴います。
正確な接続と水質の最終確認を行った後、新しい管への水の流れを段階的に開始。
この切り替えは、利用者にとってほとんど影響がないように計画され、連続した水供給が維持されるように配慮されます。
(7)仮設管撤去
仮設管撤去では、新設した耐震管への全ての給水が確実に切り替わったことを確認後、必要なくなった仮設管を安全かつ効率的に撤去します。
この作業により、工事現場の整理が行われ、土地を元の状態に戻すことが可能となります。
仮設管の撤去は、新しい水道システムの機能が正常に動作していることを前提としており、不要となった設備を取り除くことで、環境の整備と美化を図ります。
仮設管撤去を通じて、地域の景観を保ちながら、水道インフラの更新作業を完全に終了させる重要な役割を果たします。
(8)舗装
舗装は、水道管の布設やその他の地下工事で一時的に撤去または損傷した道路表面を元の状態に復旧させる作業を指します。
この段階で行う舗装作業は、工事によって影響を受けた地域の安全性と機能性を回復させるために非常に重要です。
具体的には歩道や車道の境界ブロック、L型側溝、点字ブロックなどの道路構造物を正確に再配置し、必要に応じて新たな材料を使って修復します。
また道路上には様々な線や記号が表示されているため、これらを工事中に消失した場合は、正確に再描画し元の状態に戻す作業も含まれます。
舗装工程は、道路の損傷を修復し、日常の通行に支障が出ないようにするための最終的な整備です。
工事完了後の舗装は、美観を保ちつつ、交通の安全と流動性を確保するために、高い精度と品質が求められます。
水道管工事に使用する配水管の選定基準
水道管工事において正しい配水管を選ぶことは、効率的で安全な水供給システムの構築に不可欠です。
ここからは、配水管の素材選定に影響を与えるさまざまな要因について詳しく解説します。
配水管の安全性
配水管が供給する水は、私たちの日常生活に直接影響を与えるため、使用される材料は厳格な安全基準を満たす必要があります。
配水管の素材は、水質を汚染することなく、安全で清潔な水を供給できるものでなければなりません。
素材が水に化学物質を浸出させるリスクがないかどうかを検証することが重要です。
ダクタイル鋳鉄、ステンレス、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなど、多様な素材が使用されますが、それぞれの浸出特性を理解し、適切な選択を行うことが求められます。
また配水管の素材選定には、水道法に基づく技術的基準を遵守することが必須です。
これには、特定の浸出基準を満たしていることが含まれます。
これらの基準は、公衆衛生を守るためのものであり、各地の法規制に応じて厳しく設定されています。
配水管の強度
水道管工事に使用される配水管は、日々の運用において一定の水圧を安全に保持できる必要があります。
そのため、管の素材と構造は、水圧に関する技術的基準に適合するものでなければなりません。
水道法に基づく省令によると、配水管は150kPa(0.15MPa)以上740kPa(0.74MPa)未満の水圧を維持することが求められています。
この範囲を維持するために、配水管は適切な厚みと材質で設計される必要があります。
配水管は、内部の水の圧力(内圧)だけでなく、外部からの圧力(外力)にも耐えられなければなりません。
内圧に関しては、静水圧と水撃圧が考慮され、これらの圧力に耐えうる強度が求められます。
一方で外力としては土圧や路面荷重、さらに地震力なども重要な要因です。
これらの力に対する耐性は、管の埋設環境や施工方法によって変わります。
水道管工事に使用する配水管の素材
配水管の素材は、その耐久性、安全性、そして埋設環境への適合性によって大きく左右されます。
また水道法に定められた水圧の範囲内で機能するように、適切な素材とサイズの管を選ばなければなりません。
ここでは、これらの要素を総合的に考慮した配水管の選定基準について詳しく解説し、最適な配水管選びのポイントを紹介します。
配水管の素材を選ぶ基準
水道管工事で使用される配水管の素材にはさまざまな種類の配水管が存在します。
それぞれの素材は、強度、製造方法、維持管理の容易さなどの異なる特性を持っています。適切な配水管を選定するために、これらの素材の特徴と施工場所の条件を考慮することが重要です。
以下では、それぞれの配水管素材の詳細と選択における考慮点を掘り下げます。
■ ダクタイル鋳鉄管
ダクタイル鋳鉄管は、その優れた物理的特性から、配水管材料として広く採用されています。
この素材は従来の鋳鉄を進化させたもので、黒鉛を球状にすることにより、強度と延性が大幅に向上しています。
ダクタイル鋳鉄管は、通常の鋳鉄管に比べて高い耐久性と柔軟性を持つため、地震や地盤沈下などの外的ストレスに対しても優れた耐性を発揮します。
ダクタイル鋳鉄管のもう1つのメリットは施工性です。
重量が比較的重いものの、この管材は衝撃に非常に強く、継ぎ手部分の取り扱いや接続も容易であるため、現場での扱いやすさが保証されます。
また継ぎ手の種類が豊富で、さまざまな接続要件に柔軟に対応できるため、複雑な配管システムの構築に適しています。
■ HIVP管(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)
HIVP管(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)のメリットは、錆びることなく耐腐食性に優れている点です。
金属製の管と異なり、化学反応や水質の変化による影響を受けにくく、水の清潔さを長期間保持できます。
またHIVP管は非常に軽量で、取り扱いや施工が容易なため、工事の効率化が図れます。
この軽量性は、特に長距離にわたる水道設備の敷設や修理作業において、作業負荷を軽減し、時間とコスト削減にもなるでしょう。
施工時の柔軟性も高く、狭い空間や複雑なルートにも適応しやすいため、都市部や既存の建物内での使用に適しています。
ただしHIVP管は急激な温度変化には弱く、特に寒冷地では水の凍結による管の破損リスクが高まります。
そのため温暖な地域での使用が推奨され、寒冷地では断熱材の使用や他の材料への変更の検討が必要になります。
■ ポリエチレン管
ポリエチレン管はHIVP管のいくつかのデメリットを補う特性を持ち、特に柔軟性と耐震性に優れているため、様々な環境での使用が可能です。
ポリエチレン管の主なメリットは、耐振動性と耐熱性です。
地震や温度変化の激しい地域でも、水道管としての信頼性を保てます。
また化学物質に対する耐性も高いため、腐食や化学的侵食が問題となる環境にも適しています。
これらの特性は、水質を保護し、長期にわたる安定した水供給を支える要因となっています。
さらに、ポリエチレン管は接続の容易さも特徴の1つです。
継ぎ手と管本体を接着剤や特別な工具を使用せずに接続できるため、施工時の時間とコストを削減できます。
このため、急速に設置が必要な場合や修理が頻繁に必要とされる地域での使用に特に適しています。
ただし、ポリエチレン管は紫外線に弱く、直射日光が当たる場所では素材が劣化しやすいという欠点があります。
そのため、露出する可能性のある環境で使用する際には適切な保護措置が必要です。
また価格が比較的高いため、プロジェクトの予算や長期的なメンテナンスコストを考慮して選定することが重要です。
■ ステンレス管
ステンレス製の管は錆びにくい特性を持ち、長期間にわたる使用においてもその性能を維持します。
このため、頻繁な交換やメンテナンスが必要な環境に適しており、コスト効率の面でも長期的に見て経済的です。
また、ステンレス管は100%リサイクル可能な素材であるため、環境への負担が少なく、サステナブルな建設材料としての需要が増加しています。
塗装を必要としないため、設置後の追加的な処理が不要で、地上に露出する場所でもそのまま使用できるのがメリットです。
高価な価格がネックとなる場合もありますが、耐久性とメンテナンスの容易さを考慮すると、ステンレス管は多くの水道インフラプロジェクトで採用される理由が明確です。
特に、厳しい環境条件下や見栄えを重視する場所での使用に適しています。
まとめ
水道管工事には常に安定した水供給が行えるようにするため、計画的な管理と適切な技術が必要です。
また配水管の選定は将来のメンテナンスやコスト、環境条件などを総合的に考慮し、最適なものを選ぶことが不可欠です。
適切な配水管の選択は、安全で持続可能な水供給システムの構築に直結し、長期にわたるコミュニティの健康と環境保全につながります。
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