BIM/CIM活用事例|現場の生産性を上げた成功事例と取り組みについて紹介します

公開日 2024.6.27

メトロ設計が取り組む電線共同溝事業においても、CIMを積極的に導入しており、今後も増えていくことが予想されます。
建設業界における技術革新は日々進化しており、とくにBIM/CIMの導入に注目が集まっています。
BIM/CIMを活用することで、設計から施工管理に至るまで情報を一元管理でき、作業の効率化と精度の向上の実現が可能です。
本記事では、BIM/CIMを導入した事例を紹介します。


BIM/CIMとは

BIM/CIM(Building / Construction Information Modeling ,Management)とは、建設プロジェクトの計画、設計、施工、維持管理の各段階で3次元デジタル技術を活用し、情報を一元管理することで効率化と品質の向上を目指す技術です。
プロジェクトに関わる全ての関係者が情報を共有することで、建設生産・管理システム全体の業務高度化が可能です。

さらに、このモデルを活用することまでを含めて、BIM/CIMと呼ばれています。
BIMとはBuilding Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略で、主に建物情報を3次元のデジタルモデル化することを指しています。
CIMとはConstruction Information Modeling(コンストラクションインフォメーション モデリング)の略で、3次元モデルと各種データを結びつけて活用することです。

国土交通省はBIM/CIMの導入を推進しており、建設業界の生産性向上と品質保持・向上に寄与しています。 BIM/CIMモデルには部材の材質や仕様など、各種属性情報が含まれており、計画から施工、そして維持管理に至るまでのすべてのフェーズで情報が利用され、プロジェクトの効率と品質が向上します。


BIM/CIMデータ活用事例

本項目では、BIM/CIMが具体的にどのように現場で活用されているかを、2つの事例を通じて詳しく解説します。


【事例1】竹田街道十条交差点

●概要

京都府京都市南区東九条柳下町にある竹田街道十条交差点は、地下に多くの管とケーブルが複雑に交差している場所です。
電線共同溝や変圧器などの重要なインフラが密集しており、これらの正確な位置関係を理解することが非常に重要です。

新しい工事を計画する際には、既存の埋設物と干渉しないように、効率的かつ安全に作業を進める必要があります。
BIM/CIM技術の活用により、3Dモデルを作成し、深さが同じで混在する埋設管と電線共同溝が交差する部分に焦点を当て、2次元図面では捉えにくい干渉を可視化しました。

画像:3Dモデルと2次元図面の比較イメージ
出展:国土交通省近畿地方整備局ホームページより
https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2023/lbhrsn000000m6iu-att/a1684912630375.pdf

●内容

本事例では、国土交通省のBIM/CIM活用ガイドラインに基づいた「統合モデル」の作成が行われました。
この統合モデルは、地形、地質・土質、線形、土工形状、構造物のデータを統合しており、広範な情報を一目で把握できるというメリットがあります。

モデルの作成では、平面の地形は2Dデータを使用し、既存の埋設物の位置や深さの情報は、管理者が持つ管理台帳に記載されている情報を取り入れました。
精度向上のために4箇所での試掘も実施し、その結果をモデルに反映させています。

本モデルは「LOD300」の詳細度で作成されており、主要な外形を正確に表現していますが、附帯工などの細部の構造や接続部は含まれていません。
LOD(Level Of Detail)とはモデルの「形状」の 詳細度を示すもので、 100から500までの3Dモデルの5段階のレベルで、数値が高いほど形状がより詳しくなります。

本モデルを活用することで、地下のインフラの配置が明確になり、新しい工事の計画時のリスクを低減できました。
また、施工計画を策定する際や、協議を行う際には、関係者間で情報が共有されやすくなり、意思決定の速度と精度が向上しました。

画像:作成した3Dモデルの鳥観図
出展:国土交通省近畿地方整備局ホームページより
https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2023/lbhrsn000000m6iu-att/a1684912630375.pdf

●効果

3Dモデルを作成した結果、計画中の電線共同溝や照明柱が既存の埋設物とどのように干渉するかを視覚的に把握できたことが大きなメリットです。
また、雨水引込管と電線共同溝、照明柱の基礎と下水道が干渉することが明らかになり、事前に対策を講じることができました。

さらに3Dモデルの作成を通じて、既存の埋設物に関する不明瞭な土被り情報が多いことが判明したのです。
モデルでは干渉しているように見える箇所が実際には干渉していない場合もありました。
これは管理台帳に記載されている情報が不十分であったためです。
誤差を正確に把握し修正するために、現場での試掘作業が実施されました。

これらの対応によって、工事のリスクを大幅に減少でき、計画の見直しや設計の変更を迅速に行うことが可能となり、結果として工期の短縮やコスト削減に貢献しました。


【事例2】倶利伽羅防災トンネル

●概要

倶利伽羅防災トンネルは、富山県小矢部市と石川県河北郡をつなぐトンネルです。 北陸地方の重要な防災施設として計画されており、災害発生時には安全な通行や迅速な復旧活動のための重要な役割を果たすことが期待されています。

工事の主な課題は、トンネル終点側の坑口が地すべりの危険区域の直下に設計されていた点です。
この問題を解決するために、BIM/CIMモデルを用いて、地すべりが潜在するブロックの近くの地域を詳細にモデリングしました。


●内容

トンネルの終点側坑口が地すべりブロックの直下に計画されており、地すべり面とトンネルの位置関係や影響を正確に把握する必要があったため、BIM/CIM技術を用いました。

本プロジェクトでは、2Dの平面図だけでは捉えることができなかった地すべりのすり鉢状の面を、3Dモデルで明確に視覚化しました。

画像:トンネルと地滑り⾯の位置関係の確認【トンネル】
出典:国土交通省BIM/CIMポータルサイト
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimsummary.html

通常、2D図面ではトンネルの中心の縦断図のみで確認します。
しかし、3Dモデル化することで周囲の地形も反映され、地すべり対策工とトンネルの間の正確な距離や位置関係を把握できます。

BIM/CIM技術の活用により、地すべり対策工の設置計画をより詳細に検討でき、設計の安全性を向上させるための変更を迅速かつ正確に実施できました。


●効果

BIM/CIMモデルを使用して、トンネル掘削によって生じる土砂のゆるみ範囲と地すべり面が干渉する範囲を正確に把握できました。

さらに、このデータは斜面安定解析の条件設定に活用され、設計断面の選定やトンネル施工の影響範囲の設定に役立ちました。

また、地形の起伏と地すべり面が最も接近する箇所を特定し、鋼材の中心間隔の適切な離隔が確保されているか、地すべり対策工の配置が適切であるかも3Dモデルを通じて検証されました。

3Dモデルを用いることで、潜在的なリスクが視覚的に明らかになり、大幅に低減されたことで、安全かつ効率的な施工が実現できたのです。
また、プロジェクト関係者間の情報共有や協議がより効果的に行われ、プロジェクト全体の意思決定プロセスがスムーズに進みました。

BIM/CIM技術の活用は、複雑な地質条件を有するトンネル建設における新しい基準を設定する可能性を示しています。



まとめ

本記事では、BIM/CIM技術が建設プロジェクトでどのように利用されているかを、竹田街道十条交差点や倶利伽羅防災トンネルの事例を通じて紹介しました。
2つの事例から、BIM/CIM技術がプロジェクトの効率、精度、安全性をどのように向上させるかが見て取れます。

BIM/CIM技術を活用することで設計から施工、さらには維持管理に至るまで、プロジェクトの各段階での意思決定が大幅に改善されます。
したがって、コストの削減やリスクの低減、工期の短縮が実現可能です。

次のプロジェクトでBIM/CIM技術の導入をお考えなら、メトロ設計がサポートします。プロジェクトの初期段階から統合的なアプローチを採用し、成功を目指すお手伝いをします。

BIM/CIM技術についてのご相談や導入方法に関する詳細は、メトロ設計までお気軽にお問い合わせください。専門のスタッフが丁寧に対応し、最適な解決策をご提案いたします。

関連ブログ
メトロ設計の取組みやまちづくり、
インフラ関係の情報を定期的に発信しています!
無料でメルマガ登録する
暮らしに密着した社会資本を整備する、専門家集団です。
わたしたちは60年に渡り、社会資本の施工事業者のパートナーとして現地調査・計画・設計等に専心してまいりました。
長年の知識を生かしたマネジメントで、住民の方と施工事業者との架け橋となるような、建設コンサルタントを目指しています。
無電柱化や電線共同溝、道路、上下水道、地下鉄など、地下インフラの整備は弊社へお任せください。どうぞお気軽にご相談くださいませ。