鉄道工事の流れとは?事前の調査や設計など完成までの工程について詳しく解説

カテゴリ: 設計 鉄道工事
公開日 2024.7.26
更新日 2024.7.29

鉄道工事はその規模や複雑さから、多岐にわたる技術的かつ計画的な工程を必要とします。
本記事では、鉄道工事の進行過程を段階ごとに詳しく説明します。
鉄道を完成させるためには、地質調査から設計、そして実際の建設作業に至るまで、様々な専門技術と厳密な計画が必要不可欠です。
今回の記事では、鉄道工事の全体像と必要な各段階の作業内容についてご紹介し、どのようなプロセスを経て安全で効率的な鉄道システムが構築されるのかについて解説します。


鉄道工事の計画から図面設計まで

鉄道工事を開始する前には、詳細な計画作成と図面設計が欠かせません。
この工程は工事の成否を大きく左右し、将来の鉄道の安全性と機能性を保証するための基礎です。
本項では、鉄道工事の計画から工事開始までの流れを詳しく説明し、各段階でどのような作業が行われるかをご紹介します。
鉄道工事は複雑なプロセスを含むため、事前の徹底した準備が求められます。




事前調査・工事計画

事前調査では、建設地の地質や地形、環境影響などを細かく調べ、工事に必要なデータを集めます。
工事計画では、事前に収集した情報をもとに、工事のスケジュール、必要な機材や材料の選定、人員配置、予算の計画を策定します。
この時点で、鉄道の安全性や効率、コストパフォーマンスを最大化するための戦略が練られます。
入念な事前調査と工事計画を実施することで、工事の進行がスムーズになり、トラブルや遅れを最小限に抑えることが可能です。

資金調達

鉄道工事には多額の資金が必要です。
資金の調達方法には、公的資金、民間投資、あるいはその両方の組み合わせがあります。
鉄道工事を支援するための国や地方自治体から補助金を公的資金、銀行ローンや民間企業からの出資のことを民間投資というように分けられます。
とくに大型プロジェクトの場合、プロジェクトファイナンスを利用して資金を集めることがあります。
プロジェクトファイナンスは、プロジェクト自体が収益を生み出し、その収益で借入金の返済を行う形式です。
最近では、パブリックプライベートパートナーシップ(PPP)やビルド・オペレート・トランスファー(BOT)といった方式も増えています。
多様な資金調達方法を活用することで、鉄道工事は経済的に持続可能で、計画から完成まで安定した資金供給が保証されます。

許認可の申請

鉄道工事を行うには、計画から図面設計などで許認可の申請が必要になります。
この許認可が必要となるのは、
・新しい路線を作る
・既存の路線を改良する
・車庫を作る
など様々なケースが該当します。
施工するためには国土交通大臣に認可して貰う必要があり、鉄道事業法、鉄道営業法という法律に基づいて行われます。
審査基準は法令上の技術基準を満たしているか、採算が取れるのかという2点で審査されます。審査の結果、計画に問題がないと判断されれば、工事の認可を受けた後に鉄道事業者は実際の工事を開始することができます。

住民説明・工事準備

鉄道工事を開始する前には、住民説明会の実施が欠かせません。
説明会の前に環境影響評価(環境アセスメント)を実施し、住民や自治体などの意見を聴きます。
説明会では、工事の目的やスケジュール、予想される騒音や振動、交通への影響など、住民の生活に直接関わる情報を共有し、環境影響評価(環境アセスメント)の結果等の説明を行い理解と協力を求めます。
説明会を実施することで、工事中のトラブルを事前に未然に防ぎます。
また、工事準備として、現場の安全対策も徹底します。
安全柵の設置、騒音防止措置、交通整理計画の策定などが含まれ、重機の運搬や大規模な建設作業による影響を最小化するための準備が行われます。
住民説明会を実施し、適切な工事準備を整えることで、プロジェクトはスムーズに進行し、地域社会との良好な関係を維持できるでしょう。



鉄道工事の流れ

鉄道工事は多くの段階を経て進められます。
計画立案から実際の建設、そして最終的な完成に至るまで、それぞれのステップが非常に重要です。
本項では、実際の鉄道工事がどのように進行するのかをご紹介します。
鉄道工事の全体的な流れと、各段階で行われる主な作業内容について把握しておきましょう。




測量

鉄道工事の初期段階で極めて重要な作業が測量、杭打ち、地質調査で、工事を正確に行うための基盤となります。測量作業では、建設地の地形や地勢を詳しく調べ、そのデータを基に線路のルートや勾配、カーブなどの計画を立てます。
測量したデータは、後の設計や建設工程での基礎データとしても使用されます。
杭打ちでは、測量で得られた情報に基づき、正確な位置に杭を打ち込むことで、建設作業の精度を高めます。地質調査では、建設予定地の地質を詳しく調査し、土壌の種類や水理条件、地盤の強度などを確認します。

これらの情報は、線路の安全性を確保し、長期的な安定性を保つために非常に重要となります。

設計

鉄道工事の設計段階では、詳細な設計図を作成すると同時に、必要な用地を確保するために国や地方自治体との協議が重要な役割を果たします。
設計プロセスでは、初期測量で得たデータを基にして、鉄道の線路や駅、その他のインフラがどのように配置されるかを決定します。
技術的な要件だけでなく、環境への配慮や地域社会との調和も考慮した設計をすることが重要となります。
用地の確保については、鉄道のルート上に必要な土地を取得する過程で、国や地方自治体との密接な協議が行われます。協議では、土地の取得方法、権利関係の調整、補償の問題などが詳細に検討され、地域の開発計画や将来の都市計画との調和も重要視されます。

用地取得

鉄道の新線を作るときや、鉄道駅の新しい出入口(2箇所の設置が義務付けられている)を作るときには 用地取得が必要になります。用地取得するためには、国や地方自治体、土地所有者との協議を行う必要があります。

用地取得の手続きは地域の法令や規制に従って行われ、環境影響評価や公共の利益を考慮した上で進めなければいけません。
また、地域社会との良好な関係を維持するためにも、透明性と公平性を保つことが非常に重要です。

鉄道工事の用地取得では、まず初めに計画に基づいた必要な土地の範囲の特定を行います。
この時点で、土地利用の現状や未来の計画を詳しく調査し、どの土地が鉄道建設に必要かを決定します。
次に、対象土地の所有権や権利関係の詳細な調査と、土地所有者への接触を図ります。
この過程を経て、市場価値や土地の位置、現在の土地利用状況および将来の利用計画に基づいて土地の価値が決定されます。

その後は、土地所有者との交渉です。
交渉が合意に至れば、土地売買契約を結び、土地の登記や代金支払いに進めるでしょう。
用地取得で合意に至らない場合、公共の利益を理由に、国や地方公共団体が法的な手続きを通じて土地を取得する土地収用法を用いることがあります。
最終的に、すべての法的手続きが完了し、土地の所有権が鉄道会社に移転すると、用地取得は完了です。




工事発注

工事発注の最初のステップは、工事費の詳細な計算です。
工事費は、設計図、使用する材料、必要な機械や人員、安全対策や環境管理などのコストを総合して算出します。
工事費の計算には、事前の測量や設計から得られたデータが基礎として活用され、工事が効率的かつ経済的に進められるよう計画します。
発注手続きは通常、公開入札や事前資格審査により透明性と公平性が保たれた上で、コストパフォーマンスに優れた業者が選定されます。

工事管理

工事期間中は、工事が計画通りに進行しているかを確認し、問題が発生した場合には迅速に対応する工事管理が欠かせません。
工事管理の主な目的は、工事の品質を維持し、安全基準を守りつつ、スケジュールと予算内でプロジェクトを完了することです。
工事管理の具体的な内容には、日々の進捗の監視、問題発生時の対応、リソースの適切な配分、工事現場の安全管理などが含まれます。
また、使用される材料の仕様や施工方法が計画どおりであることを確認する品質管理も非常に重要です。
工事管理者は、工事がスムーズに進行し、予定された品質とコストで完成するよう、日常的に全体の監督を行います。

工事完成

鉄道工事の完了後には、建設された鉄道が安全基準を満たしているかを確認し、予定通りに機能することを保証するため、様々な検査や試験が必要です。
最初に行われるのは、強度試験です。
線路、橋梁、トンネルなどの主要構造物の耐久性を評価するためのもので、様々な負荷テストが含まれます。
次に、電気系統の検査が行われ、信号システムや電力供給が正しく、かつ安全に機能しているかがチェックされます。
また、実際の運行条件を模擬する運行試験も重要です。
列車の走行テストや緊急停止試験、システムの反応速度を確認するテストなどが含まれ、全体の運行の安全性と効率を評価します。
すべての検査が基準に適合し、問題ないことが確認されれば、鉄道は正式に運行を開始する準備が整います。

貸付・譲渡

鉄道工事が完了し、すべての検査と試験が終了すると、鉄道事業者への受け渡しが行われます。
貸付の場合、鉄道施設や機材は一定期間、特定の事業者が使用することが許可されます。
このとき、使用権は事業者に与えられますが、所有権は元の所有者である国や地方公共団体に残ります。
貸付期間中、事業者は施設の維持管理を行い、定められた条件に基づいて運営をしなければいけません。
譲渡の場合、鉄道の所有権が完全に新しい事業者へ移ります。
譲渡は、鉄道が公共の利益に資すると判断された場合や、民間企業によるより効率的な運営が望ましいと見なされた場合に行われます。
譲渡された後、新しい所有者は鉄道の運営と保守の全責任を負わなければいけません。



まとめ

本記事では、鉄道工事の流れと、工事に必要な各段階の詳細について解説しました。
鉄道工事は、計画の立案から設計、用地取得、工事の発注、施工管理、検査・試験、そして最終的な受け渡しに至るまで、多くの複雑なプロセスを経て進められます。
各プロセスは、鉄道が安全かつ効率的に運行されるために欠かせません。

鉄道工事は計画から運行開始まで、専門的な知識と厳密な管理が求められ、多方面の協調と調整を必要とする複雑なプロジェクトです。鉄道工事に関する設計についてご不明点がある場合や、専門的なアドバイスが必要な際は、ぜひ「メトロ設計」へお問い合わせください。
メトロ設計は、鉄道工事に関する設計において豊富な経験と専門知識を持ち、皆様のプロジェクトを全力でサポートいたします。

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