水道管の耐用年数と現状|今後20年で約7,000kmの更新が必要とされる理由

カテゴリ: 上下水道 水道管
公開日 2025.2.27

水道管の耐用年数は約40年とされていますが、老朽化が進んでいるのが現状です。
今後20年間で、毎年約7,000kmの水道管を更新する必要があると試算されています。
水道管の劣化によるリスクや最新の調査方法を解説し、安全な水の供給を守るための対策を紹介します。



はじめに

「水道管の耐用年数はどれくらい?」

「耐用年数を超えて使用した場合どうなるのか?」

私たちの生活に欠かせない「水」。日本の水道は高度経済成長期から急速に普及し、現在の普及率は約98%と言われています。

しかし、現在日本の水道管は耐用年数を超えているものも多く、水道管の劣化が問題視されています。
実際に、1月28日に埼玉県八潮市の交差点で道路が陥没する事故が発生しましたが、原因は呼び径4.75メートルの下水道管の破損とされています。

では本記事では、以下のポイントについてわかりやすく解説します。
●水道管の耐用年数と老朽化の現状
●交換が必要な理由と今後の更新計画
●老朽化によるリスクと最新の調査・検証方法






水道管の耐用年数

水道管の耐用年数は、一般的に40年とされています。
しかし、管の材質や使用環境によって、実際に使用できる期間は異なります。
特に、高度経済成長期に整備された水道管は老朽化が進んでいるのが現状です。
そのため、今後20年間で全国で毎年約7,000kmの水道管を更新する必要があると試算されています。

材質別の耐用年数と実際の使用年数

上水道と下水道に使用される主な水道管の材質ごとの耐用年数と、実際に使用できる年数を、以下の表にまとめました。



耐用年数を超えた水道管を使い続けると、腐食や破損による水漏れのリスクが高まります。
特に、鉛管は漏水や健康被害の恐れがあるため、早急な交換が必要です。

これからの水道管更新の必要性

日本の水道インフラは、高度経済成長期に整備されたものが多く、その多くが耐用年数を超えています。
厚生労働省の試算によると、今後20年間で毎年約7,000kmの水道管を更新しなければなりません。
老朽化した水道管を放置すると、大規模な水漏れ事故や水質の悪化を招く可能性があります。
そのため、計画的な更新が不可欠です。






水道管に関する課題

水道管の老朽化と更新の必要性

日本の水道管は、高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が深刻な問題となっています。
耐用年数を超えた水道管の割合は年々増加しており、平成28年度には14.8%に達しました。
その結果、年間2万件以上の漏水や破損事故が発生しており、早急な対策が求められています。

小規模水道事業者の経営基盤の脆弱性

水道事業は市町村単位で運営されているため、多くの事業者が小規模で、経営基盤が弱い状況です。
特に、職員数が限られている事業者では、資産管理や危機管理対応が十分に行えないケースが増えています。
さらに、人口減少が進む中で、経営状況が悪化し、水道サービスの継続が困難になる可能性も指摘されているのが現状です。

計画的な更新のための資金不足

水道管の更新には莫大な費用がかかります。
しかし、約3分の1の水道事業者では、給水原価が供給単価を上回る「原価割れ」の状態です。
そのため、必要な資金を十分に確保できず、計画的な更新が進まない事業者も多く存在します。
この状況を改善するためには、国や自治体による支援の強化が不可欠です。

都道府県別の水道管老朽化率

平成27年度末時点の「都道府県別の管路経年化率」によると、日本各地で水道管の老朽化が進行しています。
特に、北海道、東北地方、四国地方の一部では、耐用年数(概ね40年)を超えた管路の割合が高く、30%以上に達している地域もあります。
一方で、都市部では比較的低い傾向があるものの、全国平均でも老朽化率は20%前後と高い水準です。
老朽化が進むと、漏水や破損事故のリスクが高まり、水道の安定供給に影響を及ぼす可能性があります。
このため、地域ごとの老朽化状況を踏まえた計画的な更新が急務となっています。

出典:厚生労働省 「最近の水道行政の動向について」
https://www.mlit.go.jp/common/830003739.pdf






水道管の劣化による危険性【その1】

水漏れや凍結による破損のリスク

水道管が劣化すると、内部にサビが発生し、ヒビ割れや腐食が進みます。
その結果、水漏れが起こりやすくなり、放置すると地中に埋まっている配管が破損する可能性があります。
水道管内の水が凍結して膨張することで、管がヒビ割れたり、破裂したりするため、厳寒期には注意が必要です。

鉛管の危険性

鉛管は、1940年代まで多くの家庭で使用されていましたが、現在ではその危険性が指摘されています。
長年使用された鉛管は、劣化によって鉛が溶け出し、水質に悪影響を及ぼす可能性があります。
現在も鉛製の水道管を使用している場合は、自治体に相談し、交換工事を検討することが重要です。


水道管の劣化による危険性【その2】

震災時の断水と復旧の遅れ

水道管が耐用年数を超えて劣化したままだと、地震などの災害時に破損しやすくなります。
その結果、広範囲で断水が発生し、復旧までに長い時間がかかる可能性があります。
特に老朽化した水道管は耐震性が低く、大きな地震が発生すると被害が拡大しやすくなるでしょう。

熊本地震における水道の復旧状況

平成28年に発生した熊本地震では、多くの水道管が破損し、広い範囲で断水が発生しました。
震災直後には、熊本市を含む複数の地域で約40万世帯が断水し、完全復旧までに長期間を要しました。
特に、老朽化が進んでいた水道管の被害が大きく、修復作業が難航した事例も報告されています。
このような事態を防ぐためには、耐震性の高い水道管への計画的な更新が必要です。

出典:厚生労働省 「熊本地震における水道の復旧状況」
https://www.mlit.go.jp/common/830003739.pdf






現在行われている水道管の調査・検証例

水道管の老朽化をきちんと管理し、計画的に更新するためには、正確な調査と検証が欠かせません。
特に、管体の腐食状況を把握することで、漏水や破損のリスクを事前に防ぐことができます。
現在、多くの自治体では、水道管の状態を調査し、老朽化の進行度や残りの耐用年数を評価する取り組みが進められています。

管体腐食度調査

管体腐食度調査は、水道管の外面腐食の状況を把握し、事故を未然に防ぐために実施されます。
調査結果をもとに、老朽度や耐用年数を診断し、修繕や更新計画に利用することが目的です。

調査の概要

この調査では、管路周囲の土壌や地下水の腐食性を評価し、外面腐食が進行している箇所を特定します。
特に、漏水や破損のリスクが高い地域を重点的に調査し、効率的な管路更新計画の立案に役立てます。

調査方法

調査対象は鋳鉄管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管で、漏水事故の多い地区や腐食性土壌のある地区を優先します。
調査で確認できるのは、以下の項目です。

 ●埋設環境調査
  配管の材質、埋設深さ、周囲の土壌や地下水の影響を調査し、腐食リスクを評価します。
 ●管厚の測定
  超音波厚さ計を使用し、健全部と腐食部分の厚みを比較することで、劣化の進行度を判断します。
 ●腐食深さの測定
  目視や専用の測定機器で、腐食の深さや広がりを詳しく確認します。
 ●ボルト・ナットの老朽度評価
  継手部分のボルトやナットの腐食状況を確認し、管全体の耐久性を評価します。

調査結果の活用

調査結果は電子データとして蓄積され、維持管理計画や修繕・更新計画の基礎情報として利用されます。
また、腐食性の高い土壌には外面防食対策を施し、鋼管には電気防食を実施するなど、効果的な対策が検討されます。


超音波肉厚測定

調査の概要

超音波肉厚測定は、水道管や建物内の配管の厚さを測定し、劣化の進行状況を把握するための非破壊検査です。
水道管の老朽化が進むと、腐食によって管の厚みが減少し、漏水や破損のリスクが高まります。
この調査では、配管の内部や外部の状態を確認し、維持管理や更新計画を立てるための基礎データを取得することが目的です。

調査方法

超音波厚さ計を使用し、配管の表面から超音波パルスを内部に送ります。
その後、底面から反射した超音波パルスの往復時間を計測し、配管の厚さを測定します。
ロボットを使用すると、細かいピッチで精密な肉厚測定が可能です。
また、調査地点の選定には、過去の漏水履歴や配管の使用年数、設置環境などを考慮し、劣化の進行が懸念される箇所を優先します。

調査で発見できること

 ●配管の肉厚減少の度合い
  腐食による管の減肉の進行状況を数値化し、劣化の程度を把握できます。
 ●サビや腐食の進行度
  内部や外部の腐食状況を確認し、必要に応じて補修や更新の判断材料とします。
 ●漏水や破損のリスク評価
  肉厚の減少が著しい箇所を特定し、将来的に漏水や破損が発生する可能性が高いエリアを把握できます。

調査結果の活用

超音波肉厚測定のデータは、水道管の維持管理計画や修繕・更新計画の基礎資料として利用されます。
腐食が進行している箇所には防食処理を施し、必要に応じて管の交換を検討することで、水道インフラの安全性を確保することにつながるでしょう。


内視鏡調査

調査の概要

内視鏡調査は、水道管の内部状況を直接確認するための検査方法です。
配管の開口部から内視鏡を挿入し、管内の腐食や詰まり、損傷の有無を目視で調査します。
この方法は、管を掘削せずに内部の劣化状態を確認できるため、低コストで早急な診断が可能です。

調査方法

内視鏡を水道管の開口部から挿入し、内部の状態をリアルタイムで観察します。
カメラを搭載した内視鏡を使用することで、目視では確認できない細かい損傷や汚れの蓄積も発見することが可能です。
記録した映像や画像は、腐食の進行状況や異常の有無を詳細に分析するために保存されます。

調査で発見できること

 ●管内の腐食状況
内面のサビや腐食の進行度を確認し、交換の必要性を判断します。
 ●詰まりの原因と程度
汚れの蓄積や異物の詰まりを特定し、対策を検討します。
 ●損傷やひび割れの有無
目視では確認できない細かいヒビや損傷を発見し、修繕の必要性を判断します。

調査結果の活用

調査結果は、水道管の維持管理計画や修繕・更新計画の基礎資料として利用されます。

定期的な内視鏡調査を行うことで、早期に問題を発見し、大規模な修理や事故を未然に防ぐことが可能になります。




まとめ

日本の水道管は、高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が進んでいます。
そのため、今後20年間で毎年約7,000kmの水道管を更新する必要があると試算されています。
特に、耐用年数を超えた水道管は、漏水や破損のリスクが高まり、震災時には復旧の遅れを招くでしょう。
また、更新には莫大な費用がかかるため、資金不足により計画的な更新が進まない事業者も多く存在します。
安全な水の供給を維持するためには、現状の課題を把握し、調査や対策を講じることが不可欠です。


メトロ設計では、専門のスタッフが丁寧に対応し、最適な解決策をご提案いたしますのでお気軽にお問い合わせください。

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