【実は義務化】駅にあるバリアフリー設備と導入事例を紹介

バリアフリー化が進む今、駅設計に求められるのは安全性と利便性の両立。本記事では基礎知識から実例までをご紹介しています。利用者に選ばれる駅づくりを、メトロ設計がサポートします。
はじめに
駅を利用するすべての人にとって、安全で快適な移動環境は欠かせません。
こうした課題を解決するために進められているのが「駅のバリアフリー化」です。
本記事では、バリアフリーの法律的な背景から、具体的な設備の内容、そして全国の整備事例までをわかりやすく紹介していきます。
駅のバリアフリー化は法律で義務付けられている
駅を含む公共施設では、すべての人が移動しやすい環境づくりが求められています。
その中心にあるのが「バリアフリー法」です。
正式名称は「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」で、2006年に制定されました。
この法律では、鉄道事業者などに対して、段差の解消や通路の拡幅、案内表示の工夫など、移動のしやすさに配慮した整備を義務づけています。
バリアフリー法の対象となるのは、乗降客数が一定以上の駅です。
具体的には、1日あたり3,000人以上の利用者がいる駅が対象とされており、その数は全国でおよそ5,000カ所にのぼります。
新しく建設される駅や、大規模な改修工事をともなう駅については、基準を満たすバリアフリー設備を設けなければなりません。
さらに2018年には、法律が改正されました。
この改正により、設置の努力義務があった駅についても、状況によっては整備が義務となり、取り組みの幅が広がっています。
また、バリアフリーの整備状況を公表することも求められるようになり、利用者が事前に情報を確認しやすくなりました。
このように、法律の整備と改正が重ねられる中で、駅におけるバリアフリー化は確実に進んでいます。
今後も、誰もが安心して利用できる交通環境を実現するため、全国で取り組みが続けられています。

駅にあるバリアフリーとは?
多くの駅では、だれでも安全に移動できるように、さまざまなバリアフリー設備が設置されています。 バリアフリーの代表例はエレベーターやスロープ、バリアフリートイレといった設備です。
まず、エレベーターはホームと改札階をつなぐ重要な設備です。階段の昇降が困難な人だけでなく、ベビーカーや荷物を持つ人にとっても便利です。最近では、車いす利用者がボタンを押しやすいように、低い位置に操作パネルが設けられるなど、細かな工夫も進んでいます。
次に、スロープも欠かせません。段差をなくし、傾斜をゆるやかにすることで、車いすや歩行器を使う人の移動を支えます。特に駅構内の出入り口や通路の途中に設置されていることが多く、階段しかない場合に比べて、通行の負担を大きく減らせます。
バリアフリートイレも広く整備されています。通常のトイレよりも広いスペースを確保し、手すりや自動開閉ドア、オストメイト対応設備などが設けられているのが特徴です。また、利用者が安心して使えるように、緊急ボタンが設置されている場合もあります。
さらに、改札口の幅を広げた「拡幅改札」も導入されています。この改札は、車いすやベビーカーでも通れるように設計されており、ICカードリーダーや精算機も使いやすい高さに調整されています。
もう一つの注目設備が「エスカル」です。これは階段に取り付けられた車いす用の昇降機で、駅員の操作で階段をゆっくりと昇降します。駅構造の都合でエレベーターが設置できない場合でも、移動をサポートできる手段として活用されています。
このように駅には、多くの人が安心して利用できるよう工夫されたバリアフリー設備が整えられています。交通機関を利用する際の不安を減らすためにも、こうした設備の存在を知っておくことが大切です。

全国で進むバリアフリーの実例紹介
全国各地の駅では、地域の特性や利用者のニーズに応じたバリアフリー化が進んでいます。
とくに地方駅では、利用者数が少ない一方で、高齢化が進んでいる地域が多く、バリアフリーの整備がより重要とされています。
本項では、実際に整備が行われた駅の具体例を取り上げ、どのような課題があり、どのように改善されたのかを紹介していきます。
JR北海道 室蘭線 登別駅
登別駅では、これまで段差の多い構造が課題となっていました。
とくに改札とホームの間に階段しかなく、車いす利用者や高齢者にとって移動が困難な環境でした。
加えて、バリアフリートイレや案内表示の設置も不十分で、誰にとっても使いやすい駅とは言えない状況が続いていました。
整備後は、ホームと改札階をつなぐエレベーターが新たに設置されました。
このため、車いすやベビーカーを利用する人が安心して移動できるようになりました。
また、駅舎の改修にあわせてスロープも導入され、段差のない移動が可能になりました。
さらに、視覚障害者への配慮として、点字ブロックの敷設や案内表示の改善も実施されました。
音声案内が導入されたことで、目の不自由な方でも駅の構内を把握しやすくなりました。
あわせて、バリアフリートイレも整備され、誰でも使いやすい仕様に変更されました。
改札口も広くなり、車いすや大型の荷物を持つ利用者が通りやすくなっています。
小さな子ども連れの保護者にとっても、快適な移動が実現しています。
三陸鉄道 北リアス線 宮古駅
かつての宮古駅では、改札とホームの間に階段しかなく、車いすやベビーカーを使う人にとっては非常に移動しにくい構造となっていました。
駅構内の通路も狭く、混雑時にはすれ違うだけでも困難な場面が見られました。
視覚障害者や高齢者への配慮も十分ではなく、全体として利用者に優しい設計とは言いがたい状況でした。
そのような問題を解消するために行われた整備では、ホームと改札階を結ぶエレベーターが新たに設置されました。
また、スロープの新設によって、階段以外の移動手段が確保され、安心して駅を利用できるようになりました。
駅構内の案内サインも見直され、文字が大きく読みやすいものに変更されました。
加えて、点字ブロックの整備も進み、視覚障害者にとっても移動しやすい環境が整いました。
バリアフリートイレも導入され、だれでも安心して利用できるよう配慮がなされています。
通路の拡幅や床面の滑り止め加工など、細かな部分にも配慮が行き届いており、すべての利用者にとって利便性の高い駅へと生まれ変わりました。

※イメージ画像です
近畿日本鉄道 湯の山線 桜駅
桜駅は、近鉄湯の山線の主要駅のひとつですが、整備前はホームと駅舎との間に複数の段差が存在し、移動が困難な状況が続いていました。
車いすや高齢者が階段を利用せざるを得ない構造で、安全性や利便性の面で大きな課題がありました。
構内案内もわかりにくく、視覚障害のある方への配慮も不十分でした。
このような背景を受けて行われた整備では、駅舎の大規模な改修が実施され、バリアフリー化が一気に進みました。
エレベーターの設置により、階段を使わずにホームと改札階を行き来できるようになり、移動に対する不安が大きく軽減されました。
加えて、改札口は車いす利用者も通りやすい幅に広げられ、スムーズな移動が可能になりました。
スロープの設置もあわせて行われており、荷物を持った利用者やベビーカーを利用する保護者にとっても、より使いやすい駅へと変化しています。
点字ブロックの設置や、明瞭な案内表示への変更も進みました。
バリアフリートイレも導入されており、幅広い利用者層に配慮した設備となっています。
桜駅の改修は、日常の通勤や通学を支える地域密着型の交通インフラとして、今後のモデルケースといえる整備事例のひとつです。
近畿日本鉄道 南大阪線 高見ノ里駅
高見ノ里駅では、改修前の構造に大きな課題がありました。
ホームと改札をつなぐ経路には階段しかなく、車いすやベビーカーを使う利用者にとっては大きな障害となっていました。
また、通路が狭く、混雑時には安全面での懸念も指摘されていました。
案内表示も古く、初めて訪れる人にはわかりにくいとされていた駅のひとつです。
これらの問題を踏まえて行われた整備では、まずエレベーターが新設され、段差の解消が実現しました。
階段に頼る必要がなくなったことで、移動の自由度が大きく向上しました。
駅舎のリニューアルにともない、スロープも設置されており、高齢者や妊娠中の方も安心して駅を利用できるようになりました。
改札口の拡幅も実施され、車いすやベビーカーがスムーズに通行できるように改善されています。
加えて、点字ブロックの導入や照明の強化により、視覚に障害のある方への配慮も強化されています。
トイレもバリアフリー対応へと切り替えられ、緊急時の呼び出しボタンなど、使う人の立場に立った設計が施されています。
案内サインも見直され、大きな文字や色分けで直感的に理解しやすいデザインとなりました。
JR西日本 山陽本線 新井口駅
新井口駅は広島市内に位置し、周辺に商業施設や文化施設が集まる拠点駅です。
整備前は、改札とホームを結ぶ手段が階段しかなく、車いす利用者や高齢者にとって大きな負担となっていました。
また、駅構内は段差が多く、ベビーカーやキャリーバッグを引いた利用者にも不便な環境でした。
こうした問題を解決するために、バリアフリー化工事が実施されました。
駅の構造そのものを見直し、エレベーターを新たに複数基設置され、改札階と各ホームをスムーズにつなげる動線が確保されました。
階段のみに依存していた時代と比べ、移動の選択肢が広がり、多様な利用者にとって利便性が大きく向上しています。
さらに、バリアフリートイレの新設も行われました。
広めのスペースに加え、手すりやオストメイト対応設備、緊急通報ボタンも備えられており、だれでも安心して使える設備となっています。
案内表示の見直しも進められ、視認性の高いデザインに一新され、さらに点字ブロックの敷設によって視覚障害者への配慮も強化されました。
通路幅の拡張や床面の段差解消など、細部にわたる改善もなされています。
まとめ
駅のバリアフリー化は、すべての人が安心して公共交通を利用できる社会の実現に向けて欠かせない取り組みです。今回紹介した各地の整備事例からもわかるように、課題の把握と改善策の実行により、駅の利便性と安全性は大きく向上しています。
法律に基づいた整備だけでなく、地域の実情に合わせた工夫も数多く見られ、単なる義務の枠を超えた取り組みが広がっていることが特徴です。これから駅を利用する際には、こうしたバリアフリー設備に注目してみるのもよいかもしれません。日々の通勤・通学、旅行の途中でも、だれかの助けとなる設備が整っていることに気づけるようになります。
メトロ設計では、専門のスタッフが丁寧に対応し、最適な解決策をご提案いたしますのでお気軽にお問い合わせください。

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