設計トラブルゼロへ!地下鉄×都市部で活きる3D測量・レーザースキャナの実力とは

公開日 2025.7.28
更新日 2025.7.31

「地下鉄工事の設計トラブル、もう終わりにしませんか?」
都市部の複雑な環境で進む地下鉄プロジェクトに、3D測量とレーザースキャナがもたらす革新を解説します。
高精度な現況把握で、干渉回避や迅速な設計変更を実現。施工の効率化と安全性を高める具体的な事例も紹介します。
あなたのプロジェクトを成功へ導くヒントを見つけて、今すぐ実践しましょう。



はじめに

「地下鉄建設プロジェクトで、設計トラブルをゼロにしたい」「都市部での測量作業を、もっと効率的に進めたい」とお考えではありませんか。
地下鉄の建設や改修では、複雑な都市部の地下空間でミリ単位の精度が求められます。
しかし、従来の測量方法では、こうした厳しい条件下での作業に多くの課題がありました。

本記事では、地下鉄事業に携わる担当者の方へ向けて、設計トラブルを未然に防ぎ、都市部での工事をスムーズに進めるための3D測量の実力と、レーザースキャナの具体的な活用方法を詳しく解説していきます。
最後までご覧いただき、貴社のプロジェクトを成功に導くヒントを見つけてください。



設計精度の出発点|地下鉄プロジェクトに欠かせない「現況平面図」とは






地下鉄の設計を進める際、まず基本となるのは「現況平面図」です。
この図面は、工事を行う土地の現在の状態を正確に示したもので、プロジェクト全体の土台となります。
特に地下鉄のような大規模なインフラ工事では、地上の構造物はもちろん、地下に埋設された配管やケーブルなど、目に見えない情報まで網羅した詳細な図面が求められます。

地下鉄の設計では、地上の建物や道路、鉄道、電線などの配置に加え、地下に埋まるガス管、水道管、下水管、電力ケーブル、通信ケーブルといったライフラインの正確な位置情報が必要です。
また、地質や地下水位などの地盤情報も、トンネル掘削や構造物の基礎設計に欠かせない情報となります。
これらの情報を漏れなく把握することで、将来的な問題の発生を防ぎます。

もし、この現況平面図に少しでも不備があれば、後続の工程に大きな影響をおよぼしかねません。
たとえば、地下の埋設物の位置がずれていれば、掘削作業中にそれらを損傷させるおそれがあります。
また、地上の構造物との干渉が見過ごされてしまうと、安全性の問題が発生したり、最悪の場合、工事自体が大幅に遅延したりする事態も考えられます。

正確な現況平面図は、設計段階でのリスクを減らすだけでなく、施工の効率性や安全性を高める上でも極めて重要です。
精度の高い図面があれば、設計者はより現実的な計画を立てられます。
施工者は、予期せぬ障害に遭遇することなく、スムーズに作業を進めることが可能です。
結果として、工事の品質が向上し、予算内での完了にも寄与します。
現況平面図の精度は、地下鉄プロジェクトの成功を左右する大切な要素なのです。



都市部ならではの課題|従来測量手法の限界とリスク

地下鉄工事を都市部で進める測量には、特有の難しさがあります。
従来の測量方法だけでは、対応が難しい場面も出てくるのが現状です。

これまで測量で使われてきた主な手法には、トータルステーションやレベルがあります。
これらは高精度な測量が可能で、建設現場で広く使われています。
しかし、これらの手法は基本的に「点」での計測となるため、広範囲を詳細に測るには多くの時間や手間が必要です。

都市部での測量は多くの制約に直面します。
交通量の多い道路での作業には、交通規制が欠かせません。
しかし、これは測量作業ができる時間に影響を及ぼし、効率が下がる原因となります。
夜間作業を強いられるケースも多く、作業員の負担も増えます。
また、建物が密集している場所では、測量機器を設置する場所の確保が難しいこともあります。
電波障害や視界の遮りも、正確な測量を妨げる要因となるでしょう。

測量精度が低いと、施工ミスにつながる可能性が高まります。
たとえば、地下の埋設物の位置がずれて測量されていれば、掘削作業中に意図せず埋設物を損傷させる危険性が出てきます。
こうしたミスは、工事の遅延やコスト増加に直結するだけでなく、重大な事故を引き起こすリスクすらあります。
正確な測量は、安全かつ効率的な施工を実現するための土台であり、都市部での地下鉄工事においては特にその重要性が高まります。



次世代測量の鍵|「3D測量」で変わる現況把握のスタンダード

現代の建設業界では、測量のあり方が大きく変わっています。
その中心にあるのが「3D測量」です。
この技術は、従来の測量では得られなかった詳細な空間情報を記録し、地下鉄プロジェクトのような複雑な工事において、現況把握のスタンダードを塗り替えています。

3D測量では、レーザースキャナなどの機器を使い、対象物から反射されるレーザー光の情報を大量に集めます。
集められたデータは「点群データ」と呼ばれ、無数の点の集合として表現されます。
この点群データは、対象物の形状や位置だけでなく、空間全体のあらゆる情報をデジタルデータとして記録します。
まるで現実の空間をそのままコンピューターに取り込んだかのように、詳細な三次元情報が手に入ります。

取得した点群データは、その後の設計プロセスにスムーズに連携できます。
点群データをもとに、詳細な二次元図面を作成できるほか、さらに進んで「BIM(Building Information Modeling)」への連携も可能です。
BIMは、建物のあらゆる情報を三次元モデルとして一元管理する手法です。
点群データとBIMを組み合わせることで、設計段階での干渉チェックやシミュレーションが容易となり、手戻りの大幅な削減につながります。

3D測量は、地下鉄プロジェクトの全フェーズにおいて、品質向上、コスト削減、工期短縮に貢献する重要な技術です。



【測量技術別に解説】UAVと地上レーザースキャナの特徴と使い分け






3D測量と一口に言っても、その手法は一つではありません。
特に地下鉄工事のような都市部の複雑な環境では、現場の状況に応じて測量技術を選ぶことが大切です。
ここでは、現在注目されている二つの主要な3D測量技術、UAV(ドローン)測量と地上型レーザースキャナ(TLS)について、それぞれの特徴と、どのような場面で使い分けるべきかを詳しく解説します。


UAV(ドローン)測量

UAV、いわゆるドローンを使った測量は、近年急速に普及しています。
この測量方法の大きな特徴は、広範囲のデータを効率よく取得できる点です。
ドローンは上空から広範囲を一度に撮影したり、レーザーを照射したりできます。
この測量技術は、広大な敷地や、人が立ち入りにくい危険な場所、高所の構造物のデータを集めるのにとても役立っています。

しかし、UAV測量には限界もあります。 GPS信号が届かない場所や、電波状況が悪い場所では使用が難しいです。
そのため、屋内や地下空間、トンネルのような場所での測量には向いていません。
また、航空法などの規制により、飛行できる空域や時間、条件が定められているため、都市部では自由に飛ばせないケースもあります。
天候にも左右されやすく、強風時や雨天時には測量が行えないといった制約があることも覚えておきましょう。


地上型レーザースキャナ(TLS)

地上型レーザースキャナ(TLS)は、地上に設置して使う高精度な測量機器です。
この技術の最大の特徴は、ミリ単位という非常に高い精度で測量できる点にあります。
対象物にレーザーを照射し、その反射時間から距離を測り、詳細な3D点群データを生成します。
複雑な形状の構造物でも、隅々まで正確にデータ化できます。

TLSは、狭い場所や暗い場所、GPS信号が届かないような環境でも活躍します。
たとえば、駅構内やトンネル内部、地下通路といった場所では、UAV(ドローン)測量が難しい場合でも、TLSならば高精度な測量が可能です。
夜間作業が多い建設現場でも、限られた照明の中で精密な計測を行えます。

地上型レーザースキャナは、高精度が求められる都市部の地下鉄工事で、その能力を存分に発揮する測量技術です。



都市部×地下鉄のベストパートナー|地上型レーザースキャナの活用が進む理由

都市部での地下鉄工事は非常に複雑で、多くの制約があります。
こうした環境下で、地上型レーザースキャナ(TLS)の活用が急速に進んでいるのには明確な理由があります。
その高い精度と柔軟性が、都市部の特殊な状況に非常に合っているからです。

例えば、駅舎の改修工事では、既存の構造物の正確な形状をミリ単位で把握し、新しい設備との干渉チェックに役立ちます。
地下街の工事では、既存の店舗や通路、埋設された配管類との位置関係を詳細に記録し、設計変更や施工時の手戻りを防ぎます。
地下鉄ホームの改良工事では、ホームと車両との隙間測定や、昇降設備の設置場所の検討など、高い安全性が求められる箇所で精密な測量データを提供します。

また、TLSで得られた高精度な3D点群データは、他工種との干渉チェックを容易にします。
設計段階で3Dモデル上で干渉を発見できれば、施工前に設計変更を行えます。
これにより、現場での手戻りや追加工事を防ぎ、コスト削減と工期短縮につながるでしょう。都市部の地下鉄工事における設計と施工の精度を飛躍的に向上させるツールです。



【事例紹介】地下鉄工事における3D測量の導入成功例






地下鉄工事における3D測量は、多くの現場で効果を発揮し、設計・施工の効率化や精度向上に貢献しています。 具体的な成功事例をいくつかご紹介します。


事例①:【渋谷駅】東京メトロ銀座線渋谷駅移設工事の3D活用

渋谷駅の銀座線移設工事では、複雑な条件下でレーザースキャナによる3D測量が活用されました。
駅構内や周辺の地下空間を含む詳細な点群データを取得し、正確な三次元モデルを作成。
これにより、設計段階での干渉チェックや施工誤差の最小化に大きく貢献しました。
(出典:CGWORLD.jp 東京メトロ銀座線渋谷駅移設工事の3Dビジュアライゼーションとは?大規模工事の3D活用に迫る!『3D Visualizer Forum for Cities & Buildings』8月23日配信


事例②:【札幌市】BIM/CIMと点群を合体しデジタルツイン化

札幌市では、地下鉄関連工事でBIM/CIMと点群データを組み合わせた「デジタルツイン」が進められています。
レーザースキャナで取得した点群データをBIM/CIMモデルに統合し、詳細な3Dモデルを構築。
情報の一元管理と効率的な意思決定を支援し、生産性向上に貢献しています。
(出典:AUTODESK 土木と建築が協力し、BIM/CIMモデルと点群を一体化! 岩田地崎建設の”デジタルツイン”施工管理


事例③:平成23年度国土交通省総合技術開発プロジェクト

国土交通省のプロジェクトでは、GNSSと地上型レーザースキャナを組み合わせた測量技術が評価されました。
トンネルなどの地下構造物や橋梁の高精度測量に適用され、従来の測量に比べ安全性と効率性が大幅に向上。
詳細かつ定量的なデータ取得の有効性が実証されました。
(出典:国土交通省 高度な国土管理のための複数の衛生測位システム(マルチGNSS)による高精度測定技術の開発




まとめ

現況平面図の“質”が地下鉄プロジェクト全体の命運を分ける


地下鉄事業では、現況平面図の品質がプロジェクトの成否を大きく左右します。
都市部の複雑な環境下で、不正確な図面は設計変更、遅延、事故、コスト増大に直結します。従来の測量手法には限界がありましたが、3D測量、特に地上型レーザースキャナの活用が、これらの課題を解決します。
ミリ単位の精度で空間をデジタル記録し、設計・施工精度を高め、安全性向上にも貢献します。
地下鉄プロジェクト成功には、3D測量による現況平面図の質が不可欠です。


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