無電柱化による景観向上とは?景観まちづくり・再開発で必要な地下インフラ設計

公開日 2026.7.27

はじめに

景観を重視したまちづくりや再開発では、建物のデザインや外構、植栽だけでなく、道路上の電柱・電線まで含めて空間全体を計画する必要があります。無電柱化は、空を広く見せ、街並みの連続性を整えるだけでなく、防災性の向上や安全で快適な歩行空間の確保にもつながる取り組みです。

ただし、電線を地下へ移せば、それだけで良好な景観が完成するわけではありません。地上に設置する機器、建物への電力・通信の引込み、既存の地下埋設物、道路管理者や電線管理者との調整まで、計画初期から一体で考えることが重要です。

本記事では、無電柱化によって景観がどのように変わるのか、開発・再開発で後回しにするリスク、計画初期に確認すべき地下インフラ設計のポイントを解説します。




景観まちづくりで無電柱化が注目される背景

無電柱化は、単なる設備更新ではありません。街並みや自然景観への視線を整え、道路・建築・公共空間のつながりを高める、景観まちづくりの手段として位置づけられています。


電柱・電線が街並みや自然景観を分断する

道路上に連続する電柱や架空線は、建築物のファサード、歴史的な街並み、山並み、海辺、街路樹などへの視線を遮ります。建物や外構を丁寧に整備しても、道路空間に多くの電柱・電線が残っていると、エリア全体の統一感や景観の連続性をつくりにくくなります。

特に観光地や景観地区では、個々の施設だけでなく、移動中に目に入る風景も地域の印象を左右します。道路空間を含めて景観を整える視点が欠かせません。


国の推進計画でも景観形成・観光振興が主要目的になっている

国土交通省は、無電柱化の主な目的として「防災・強靱化」「安全・円滑」「景観形成・観光振興」を掲げています。2026年6月に策定された第3次無電柱化推進計画では、今後5年間で約1,000kmの整備完了を目標とし、新設電柱の抑制や既存電柱の削減を進める方針が示されました。

災害対応や通学路の安全確保に加えて、地域全体で切れ目のない景観をつくり、観光地としての魅力を高めることも、無電柱化を進める重要な目的です。


都市部だけでなく地方・観光地・リゾート開発でも重要性が高まっている

無電柱化が求められるのは、大都市の幹線道路だけではありません。歴史地区、温泉地、別荘地、リゾート、地方の駅前や中心市街地など、景観そのものが地域価値や観光価値に直結するエリアでも重要性が高まっています。

とくに新規開発や面的な再開発では、道路、宅地、建築設備、外構をまとめて検討できます。完成後に既設電柱を撤去して地中化する場合と比べ、計画段階から無電柱化を組み込むほうが、ルートや設備配置を検討しやすくなります。




無電柱化で景観はどう変わるのか

無電柱化の効果は、単に「空が広く見える」ことだけではありません。建築、道路、歩行空間、地域のイメージを一体として整えられる点に大きな価値があります。


建築物や自然景観への眺望を確保できる

電柱・電線がなくなることで、建築物の正面や歴史的建造物、山並み、海岸線、街路樹などへの視界が開けます。建物本来の意匠が見えやすくなり、複数の建築物や公共空間を含めた街並みにも統一感を持たせやすくなります。

写真撮影時の見栄えだけでなく、歩いているときに景観資源を連続して感じられることが、地域の印象を高めます。


歩行空間の安全性と回遊性を高められる

歩道上の電柱を撤去できれば、歩行者が利用できる有効幅員を確保しやすくなります。ベビーカーや車いす、高齢者、荷物を持った観光客などがすれ違いやすくなり、安全で快適な移動につながります。

景観と安全性は別々の課題ではありません。歩きやすく、周囲を見渡しやすい道路空間は、滞在や回遊を促すまちづくりの基盤になります。


観光地・商業地・住宅地のエリア価値向上につながる

良好な景観と歩きやすい道路空間は、観光地や商業地では滞在時間や回遊性、地域イメージの向上を支えます。住宅地でも、街並みの統一感や安心して歩ける環境は、エリアの魅力を構成する要素になります。

無電柱化だけで地域や不動産の価値が決まるわけではありません。しかし、建築、道路、植栽、照明、サイン計画と組み合わせることで、その地域らしいブランド形成を支えることができます。








無電柱化しても景観を損なうことがある|設計上の注意点

電線を地下へ移せば、自動的に美しい景観が完成するわけではありません。地上に残る設備や沿道建物との接続方法によっては、新たな景観上の課題が生じます。


地上機器の位置や大きさが新たな景観課題になる

道路内に管路を整備しても、電力線や通信線を各建物へどのように引き込むかが整理されていなければ、引込柱や露出配線が局所的に残る可能性があります。道路と民地の境界付近に設備が集中し、外構計画との不整合が起きることもあります。

道路側の地下インフラ設計と、建築・設備・外構設計を早い段階ですり合わせ、接続位置や設備スペース、工事区分を明確にすることが重要です。


道路・外構・植栽・サインと一体で景観を設計する

無電柱化を単独の土木工事として扱うと、舗装、街路樹、照明、ベンチ、サイン、建築外構との競合が起こりやすくなります。例えば、地上機器と植栽が干渉する、点検スペースが歩行動線に重なる、舗装割付とマンホール位置が合わないといった問題です。

道路上と地下の設備配置を、ランドスケープや建築外構と同時に調整することで、機能を確保しながら、地域全体で切れ目のない景観をつくれます。



開発・再開発で無電柱化を後回しにするリスク

建築計画や外構計画が固まってから無電柱化を追加すると、地下空間や地上機器の置き場を確保できず、設計変更や事業遅延につながりやすくなります。


既存埋設物との干渉でルートが成立しない可能性がある

道路下には、上下水道、ガス、電力、通信など、多くの地下埋設物があります。既存図面や占用資料が残っていても、現地の位置や深さと一致しないケースがあるため、図面だけでルートを確定するのは危険です。

地下埋設物調査や試掘が遅れると、詳細設計後や施工時に干渉が判明し、電線共同溝のルートだけでなく、道路、外構、植栽、建築設備側の計画まで変更が必要になることがあります。


道路管理者・電線管理者・沿道関係者との調整に時間がかかる

無電柱化には、道路管理者、電力会社、通信事業者、自治体の都市計画・景観部門、沿道地権者など、複数の関係者が関わります。設備条件、引込み方法、施工分担、費用負担、工事の発注方式などについて、段階的な合意形成が必要です。

建築工事とは異なる検討・協議の時間がかかるため、建築工程に合わせて後から短期間で処理しようとすると、事業全体の進行に影響します。


後工程での設計変更が工期・コスト・景観品質に影響する

後から地上機器や管路の位置を変更すると、道路線形、外構、植栽、照明、建築設備などの設計変更が連鎖しやすくなります。工事区分や発注範囲の見直しも必要になり、工程とコストが増える要因になります。

結果として、無理な納まりを受け入れて景観品質を下げるか、計画を変更して工期・費用を増やすかという判断を迫られかねません。初期段階で実現性を確認することが、手戻りの抑制につながります。








景観を守るために計画初期で確認すべきこと

景観コンセプトを実現可能な計画へ落とし込むには、地上の見え方と地下の条件を同時に把握し、電線共同溝や建物への引込みが成立するかを確認する必要があります。

地下埋設物調査で現況と設計条件を把握する

地下埋設物調査では、既存台帳や占用資料を収集し、現地踏査、関係事業者への確認、必要に応じた試掘などを行います。管路の位置・深さ・種類、マンホールや弁類の位置、道路断面、沿道条件を整理し、利用できる地下空間を把握します。

地下の情報には不確実性があるため、構想段階、概略設計、詳細設計と進むなかで、調査精度を段階的に上げることが重要です。

電線共同溝の管路・特殊部・地上機器を一体で検討する

電線共同溝の設計では、管路ルートだけでなく、分岐部や接続部などの特殊部、地上機器、既存埋設物との離隔、道路幅員、歩道条件、施工方法を一体で確認します。各設備が単独では収まっても、点検や施工に必要な空間を含めると成立しない場合があります。

電線共同溝の設計会社を選ぶ際は、平面図を作成するだけでなく、地上機器を含めた設備全体と道路空間を横断して検討できるかを確認しましょう。


建築設備の引込みと官民境界をすり合わせる

道路側の電線共同溝と、建物側の受変電設備・通信設備をどこで接続するかを整理します。官民境界付近の接続位置、引込み管路、設備スペース、工事区分、完成後の管理区分を明確にすることが必要です。

建築設計、設備設計、外構設計、道路・地下インフラ設計の境界を曖昧にせず、それぞれの図面と工程に同じ前提条件を反映させることが、景観上の不整合や施工時の手戻りを防ぎます。


施工条件と将来の維持管理まで確認する

設計段階では、完成時の見た目だけでなく、施工と維持管理が可能かを確認します。交通規制の方法、施工ヤード、工事順序、他工事との同時施工、資材搬入、地上機器や特殊部の点検空間などが主な検討項目です。

将来の設備更新時に舗装や植栽を大きく壊さずアクセスできるか、点検作業が歩行者や施設利用者の妨げにならないかまで考えることで、長期的に景観と機能を維持しやすくなります。




景観まちづくりにおける無電柱化の進め方

無電柱化を景観施策として成功させるには、景観目標の設定、概略検討、関係者調整、詳細設計、施工・維持管理を段階的に進める必要があります。


1.景観の目標と無電柱化する範囲を定める

まず、残したい眺望、整えたい街並み、観光動線、主要な建築正面、歩行者空間を整理します。そのうえで、どの路線や区間を優先して無電柱化するのか、地上機器を見せたくない場所はどこかを定めます。

一部区間だけを整備しても、前後に電柱・電線が集中すれば景観効果が弱くなります。エリア全体で景観の連続性を確保する視点が重要です。


2.概略検討と地下埋設物調査で実現性を確認する

道路幅員、利用できる地下空間、地上機器の候補地、沿道の電力・通信需要、建物への引込み条件を確認します。その結果をもとに、無電柱化の方式、概略ルート、施工方法、工程、概算費用を検討します。

この段階から地下インフラ設計の専門会社を交えることで、景観案を描くだけでなく、道路下で実際に成立する案へ早い段階で絞り込めます。


3.関係事業者との協議を踏まえて詳細設計を進める

道路管理者、電力・通信事業者、沿道関係者との協議結果を、管路、特殊部、地上機器、引込み設備の設計へ反映します。設計条件が変わった場合には、道路・建築・外構への影響も確認します。

平面図や断面図だけでは関係者が位置関係を理解しにくい場合は、CIMなどの3次元モデルを用いて、既存埋設物との干渉や地上・地下の関係を可視化する方法も有効です。認識のずれを減らし、合意形成と手戻り防止につなげられます。


4.施工後の景観と維持管理を検証する

施工後は、地上機器、舗装、植栽、照明、サインなどが、当初の景観目標と整合しているかを確認します。また、点検や設備更新の際に、歩行空間や景観を大きく損なわず作業できるかも検証します。

完成時だけでなく、長期運用のなかで景観と機能を維持できる管理方法まで整理しておくことが大切です。








無電柱化・地下インフラ設計を相談する会社の選び方

景観コンセプトを実現するには、建築やランドスケープの知見だけでなく、道路と地下インフラを実際に成立させる設計力が必要です。


電線共同溝・道路・地下埋設物を横断して対応できるか

電線共同溝だけでなく、道路設計、既存埋設物、施工条件、沿道への引込みまで横断して検討できる会社を選びましょう。試掘や関係事業者との協議によって前提条件が変わった場合にも、個別設備だけでなく全体計画を組み直せる設計力が求められます。

あわせて、電線管理者や道路管理者との協議資料を作成し、調整内容を設計へ反映できる体制があるかも確認したいポイントです。


建築・景観設計チームと計画初期から連携できるか

計画が固まってから図面作成だけを依頼するのではなく、建築・設備・外構・ランドスケープの担当者と初期段階から協働できる会社が適しています。

景観上実現したいことと、道路・地下インフラ上の制約を双方に分かる形で整理し、代替案を含めて実行可能な計画を提示できるかが、プロジェクトの進みやすさを左右します。




まとめ|景観を守る無電柱化は計画初期の検討が重要

無電柱化は、電柱や電線をなくすだけの工事ではありません。建築、道路、歩行空間、地上機器、建物への引込み、既存の地下埋設物を一体で考える景観まちづくりです。

無電柱化を後から追加すると、地下埋設物との干渉や地上機器の配置、関係事業者との協議によって手戻りが生じやすくなります。開発・再開発の構想や基本計画の段階から、地下インフラの条件と実現性を確認することが、景観品質、工期、コストを両立させるポイントです。



メトロ設計は、電線共同溝、道路、地下埋設物に関する調査・設計の実績を持つ建設コンサルタントです。建築・開発事業者の皆さまと連携し、既存埋設物や沿道条件を踏まえた電線共同溝の予備設計・詳細設計、関係事業者との調整を支援しています。

景観を重視した開発・再開発で、無電柱化をどの段階から検討すべきか、道路下に設備を収められるかお悩みの場合は、計画が固まる前の段階からご相談ください。




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わたしたちは60年に渡り、社会資本の施工事業者のパートナーとして現地調査・計画・設計等に専心してまいりました。
長年の知識を生かしたマネジメントで、住民の方と施工事業者との架け橋となるような、建設コンサルタントを目指しています。
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