無電柱化は防災にどう役立つ?地震・台風による道路閉塞を防ぎ、緊急輸送を支える仕組み
はじめに
無電柱化というと、「街の景観をよくするための取り組み」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、無電柱化にはもうひとつ重要な役割があります。それが、地震や台風などの災害に備える「防災・国土強靱化」です。
大規模な災害が発生すると、電柱の倒壊や電線の垂下によって道路が塞がれることがあります。道路が使えなくなれば、日常の交通だけではなく、救急・消防活動、避難、物資輸送、ライフラインの復旧などにも影響が及びます。
そのため無電柱化は、電気・通信設備を地下へ収容することで、災害時にも道路機能を維持するための施策として重要性を増しています。
この記事では、無電柱化が防災にどのように役立つのかを、道路閉塞や緊急輸送道路の観点から解説します。さらに、防災上必要な無電柱化を実際の整備につなげるために必要となる、地下埋設物調査や電線共同溝設計などのポイントについても紹介します。
無電柱化の基本的な仕組みやメリット・デメリットについては、関連記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:無電柱化のメリット・デメリット】
なぜ無電柱化が防災につながるのか
無電柱化の防災価値を考える際に重要なのは、停電を防ぐことだけではありません。地震や台風によって電柱や電線が被害を受けたとき、道路そのものが使えなくなるリスクを減らし、災害時にも人や物が移動できる状態を保つことが重要です。
地震による電柱倒壊と道路閉塞
大規模な地震が発生すると、強い揺れによって電柱が傾いたり、倒壊したりする可能性があります。また、電線が道路上へ垂れ下がれば、車両や歩行者の通行を妨げる原因にもなります。
特に幅員が限られた道路では、電柱が1本倒れただけでも道路の一部または全部が通行できなくなることがあります。こうした道路閉塞が発生すれば、救急車や消防車が現場へ到着できない、住民の避難に支障が生じる、復旧車両が被災地へ入れないといった影響が考えられます。
無電柱化によって電線類を地下へ収容すれば、道路上に立つ電柱そのものを減らすことができます。「無電柱化 地震」「道路閉塞 無電柱化」という観点からも、道路上の障害物となるリスクを事前に減らしておくことは重要な防災対策といえます。
台風・強風による電柱や電線への被害
電柱や電線が被害を受けるのは、地震だけではありません。台風や強風では、電柱そのものが損傷するだけでなく、倒木や飛来物によって電線が切断されたり、道路上へ垂れ下がったりすることがあります。
こうした被害は停電につながるだけでなく、電柱や電線が道路上の障害物となり、交通を妨げる可能性があります。災害が発生してから電柱や電線を撤去するには、安全確認や関係事業者との調整も必要になります。だからこそ、「無電柱化 台風」の観点では、災害発生後の対応だけでなく、あらかじめ道路閉塞の要因を減らしておくという考え方が大切です。

無電柱化によって期待できる3つの防災効果
無電柱化による防災効果は、大きく「道路閉塞の防止」「緊急輸送の確保」「道路啓開・復旧活動の支援」という3つの観点から整理できます。
1.電柱倒壊による道路閉塞を防ぐ
都市部や住宅地には、十分な道路幅員を確保できない場所も少なくありません。そうした道路では、災害時に電柱が倒壊すると、車両が通れる幅を確保できなくなる可能性があります。道路沿いに建物が密集していれば、迂回することも簡単ではありません。
無電柱化によって道路上の電柱を減らすことは、災害時に道路を塞ぐ可能性のある障害物を事前に減らすことにつながります。道路は、人が移動するだけの空間ではありません。災害時には救援・復旧活動を支える重要なインフラでもあります。その機能を維持するという点で、無電柱化には大きな防災上の意味があります。
2.緊急車両・物資輸送ルートを確保する
大規模災害時には、消防車、救急車、警察車両などの緊急車両が迅速に移動できる環境を確保する必要があります。それだけではありません。食料や水、医薬品などを運ぶ物資輸送車両や、電気・通信・上下水道などのインフラを復旧するための人員・資機材を運ぶ車両も道路を利用します。
道路閉塞が発生すると、これらの活動が遅れる可能性があります。その意味で無電柱化は、「電線を見えなくする工事」ではなく、災害時にも道路という社会インフラを機能させるための対策と考えることができます。
3.災害後の道路啓開・復旧活動を支える
大規模災害の直後には、道路上のがれきや倒壊物などを取り除き、緊急車両が通行できる状態を確保する「道路啓開」が行われます。倒壊した電柱や垂れ下がった電線が道路上に残っている場合、単純に撤去すればよいわけではありません。通電状況などを確認し、安全を確保したうえで作業する必要があります。
道路啓開においてこうした障害物を減らせれば、救命・救援や復旧活動を進めやすくなります。「道路啓開 無電柱化」「無電柱化 復旧活動」という観点から考えても、無電柱化は災害直後だけでなく、その後の復旧プロセスにも関わる施策といえます。
防災上、特に重要な「緊急輸送道路」と無電柱化
防災目的で無電柱化を検討する際、重要になるのが「緊急輸送道路」です。緊急輸送道路は、大規模災害が発生した際に、救命・救急活動や物資輸送、復旧活動などを支える重要な道路です。
緊急輸送道路が災害時に担う役割
災害時には、防災拠点や医療機関、避難所などを結ぶ道路ネットワークが機能する必要があります。道路の一部が閉塞するだけでも、救急車が医療機関へ到達するまでに時間がかかったり、支援物資の輸送ルートが使えなくなったりする可能性があります。
特に大規模な災害では、複数の道路で同時に被害が発生することも想定する必要があります。そのため、単に道路一本一本を見るのではなく、「災害時に地域全体の道路ネットワークをどう維持するか」という視点で対策を考えることが重要です。

なぜ緊急輸送道路で無電柱化が重視されるのか
緊急輸送道路の無電柱化を進めることは、電柱倒壊による道路閉塞を未然に防ぎ、緊急車両や復旧車両が通行できる可能性を高めることにつながります。また、緊急輸送道路そのものだけでなく、防災拠点や医療施設などへ接続する道路の機能確保も重要です。
「緊急輸送道路 無電柱化」を考える際には、一本の路線を整備するという視点だけではなく、災害時に必要となる移動経路をネットワークとして捉える必要があります。どの道路を優先的に整備すべきなのか。どの区間の閉塞が地域全体へ大きな影響を与えるのか。こうした防災上の優先順位を踏まえて無電柱化を検討することが重要です。
無電柱化が防災施策として重視されている背景
無電柱化は、景観形成や歩行空間の安全確保だけでなく、防災・強靱化の観点から国や自治体の計画でも位置づけられています。
第3次無電柱化推進計画で強まる防災・強靱化の位置づけ
2026年6月には、第3次無電柱化推進計画が策定されました。無電柱化は、防災・強靱化、安全で円滑な交通の確保、景観形成など、複数の目的を持つ施策です。なかでも防災という視点では、災害時の道路閉塞を防ぎ、緊急輸送や道路啓開、復旧活動を支える道路機能を確保することが重要になります。
「無電柱化 推進計画」や「第3次 無電柱化推進計画」の詳細については別記事で解説し、本記事では無電柱化と防災の関係に焦点を当てています。
【関連記事:第3次無電柱化推進計画・無電柱化に関するガイドライン解説】
東京都でも緊急輸送道路などを重点的に整備
東京都でも、無電柱化に関する施策が進められています。特に首都直下地震など大規模災害への備えを考えると、緊急輸送道路をはじめとする防災上重要な道路で、電柱倒壊による道路閉塞を防ぐ意義は大きいといえます。
人口や建物が密集する都市部では、一つの道路が使えなくなったことによる影響が周辺エリアへ波及することも考えられます。無電柱化は、平常時の道路環境を改善するだけでなく、「災害時に道路を使い続けられるか」という視点でも考える必要があります。
防災のための無電柱化は「電線を地下に入れるだけ」ではない
防災上重要な道路でも、電線を単純に地下へ移せばよいわけではありません。道路の地下や地上の条件を確認しながら、実際に整備できる計画へ落とし込む必要があります。
既存の地下埋設物を把握する
道路の地下には、上下水道、ガス、電力、通信など、さまざまなインフラがすでに埋設されています。特に都市部では地下空間が高密度に利用されており、新たに電線類を収容するための空間を簡単に確保できるとは限りません。
そのため、無電柱化を計画する際には地下埋設物調査が重要になります。既存の台帳や占用資料を確認するだけでなく、現地調査や関係事業者への確認、必要に応じた試掘などによって、既存設備の位置や深さを把握していきます。地下空間の状況を十分に把握しないまま設計を進めると、後工程で既存設備との干渉が判明し、ルート変更などの手戻りにつながる可能性があります。

電線共同溝のルート・配置を検討する
無電柱化の代表的な整備手法のひとつが、電線共同溝です。電線共同溝設計では、ケーブルを収容する管路のルートだけを決めればよいわけではありません。分岐・接続などに必要となる特殊部、既存埋設物との離隔、道路幅員や歩道の条件、施工方法、将来の維持管理などを一体的に確認する必要があります。
道路地下の条件は場所によって大きく異なります。そのため電線共同溝の設計会社には、与えられたスペースへ設備を配置するだけではなく、既存インフラや道路条件を踏まえ、実際に施工・維持管理できる計画へ落とし込む力が求められます。
【関連記事:無電柱化・電線共同溝の設計事例】
地上機器の配置も防災・道路機能に影響する
無電柱化したからといって、道路上からすべての設備がなくなるわけではありません。方式によっては、変圧器などの地上機器を設置する必要があります。
無電柱化における地上機器の配置では、歩行者や車両の動線だけでなく、交差点での視認性や、防災活動時に支障とならないか、点検・更新のためのスペースを確保できるかなども考慮する必要があります。つまり、防災を目的に無電柱化する場合でも、地下設備だけを設計するのではなく、道路の地上部を含めた空間全体を見ることが大切です。
道路管理者・ライフライン事業者との調整が欠かせない
無電柱化には多くの関係者が関わります。道路管理者だけではなく、電力会社や通信事業者、さらに水道・下水道・ガスなど、既存の地下設備を管理する事業者との調整が必要になることもあります。
設備の仕様や配置、工事区分、施工する順番、沿道建物への引込み方法など、確認すべき項目は多岐にわたります。設計だけを先に完成させて後から関係者へ確認すると、大きな変更が必要になる場合もあります。そのため、無電柱化では設計と関係者調整を並行して進めることが重要です。
防災上の必要性と「実際に整備できるか」の両方を見る
防災上重要な場所だからといって、すべての道路を同じ方法で無電柱化できるわけではありません。無電柱化を実現するには、防災上の優先度と、道路・地下空間・施工上の条件の両方を見る必要があります。
道路幅員・地下空間・沿道条件を確認する
まず確認する必要があるのが、対象となる道路そのものの条件です。道路幅員や歩道の有無、地下埋設物の状況、地上機器を設置できるスペース、沿道建物への電力・通信の引込み方法などを整理します。
こうした条件によって、採用できる無電柱化の方式や電線共同溝のルートは変わります。防災上の優先順位だけで整備区間を決めるのではなく、計画の早い段階で「実際にどのような方法なら整備できるのか」を確認しておくことが大切です。
施工条件と将来の維持管理まで考慮する
設計上成立していても、施工できなければ無電柱化は実現しません。交通量の多い道路であれば、交通規制をどう行うのか。施工ヤードをどこに確保するのか。他の道路工事やインフラ工事とどのように工程を調整するのか、といった検討も必要です。
さらに、地下へ収容した設備も完成後に点検や更新が必要になります。防災機能を長期に維持するためには、完成時だけでなく、将来の維持管理まで見据えた設計が求められます。
防災目的の無電柱化を進める基本的な流れ
防災という目的を実際の無電柱化整備へつなげるには、優先路線を決めた後、現況調査、概略検討、関係者協議、詳細設計、施工・維持管理へと段階的に進めていく必要があります。
1.防災上の優先路線・エリアを整理する
最初に、どの道路を優先的に無電柱化するのかを整理します。緊急輸送道路のほか、防災拠点や医療施設へのアクセス路、災害時に代替ルートを確保しにくい道路なども検討対象になります。
単純に一本の道路だけを見るのではなく、災害時に地域全体がどのように動くのかを考え、道路ネットワークとして優先順位を設定する視点が重要です。
2.現況調査と概略検討で実現性を確認する
対象区間が決まったら、既存地下埋設物や道路幅員、沿道の電力・通信需要、地上機器の設置候補地などを調査します。そのうえで、電線共同溝などの整備方式、概略的なルート、施工方法などを検討します。
この段階で地下インフラ設計の専門会社を交えることで、「防災上は整備したいが、実際にこの道路で成立するのか」を早期に確認しやすくなります。
3.関係者協議を踏まえて詳細設計を進める
概略的な計画が見えてきたら、道路管理者や電力・通信事業者、その他の占用事業者などと協議し、その結果を詳細設計へ反映します。
地下空間が複雑な場所では、平面図だけでは設備同士の位置関係が分かりにくいこともあります。こうした場合には、CIMなどを活用して地下埋設物や新設設備の位置関係を可視化することで、干渉の確認や関係者との合意形成を行いやすくなります。設計段階で課題をできるだけ洗い出すことが、施工段階での手戻り防止にもつながります。
【関連記事:再開発の無電柱化はCIMで制す】
4.施工・維持管理まで見据えて防災機能を確保する
詳細設計の後は、施工中の交通をどのように確保するか、周辺工事とどのように調整するかなどを検討しながら工事を進めます。また、無電柱化は施工して終わりではありません。完成後の点検や設備更新を想定し、長期的に道路機能と電力・通信などのインフラ機能を維持できる計画にしておくことが重要です。
無電柱化・地下インフラ設計を相談する会社の選び方
防災目的の無電柱化では、「無電柱化には防災効果があります」と説明できるだけでは十分ではありません。防災上の必要性を、道路や地下空間の制約を踏まえた実現可能な設計へ落とし込めることが重要です。
電線共同溝・道路・地下埋設物を横断して対応できるか
無電柱化では、電線共同溝だけではなく、道路、既存の地下埋設物、施工条件、沿道建物への引込みなどが相互に関係します。そのため、ひとつの設備だけを見るのではなく、道路・地下空間全体を横断して検討できる会社かどうかは重要なポイントです。
調査や関係事業者との協議を進める中で、当初想定していた条件が変わることもあります。そうした場合にも、部分的な修正にとどまらず、全体を見ながら計画を組み直せる設計力・調整力が求められます。

計画初期から関係者と連携できるか
もうひとつ確認したいのが、計画初期からプロジェクトへ参加できるかという点です。無電柱化の方式や地下ルートを検討する段階で、すでに道路や周辺施設の計画が固まっていると、選択肢が限られることがあります。
詳細設計の段階になってから図面作成だけを依頼するのではなく、防災上の目的整理や概略検討の段階から、道路管理者、ライフライン事業者、発注者、設計チームなどと連携できることが重要です。防災上実現したいことと、現場で実際にできること。その両方を整理しながら、実行可能な案へ落とし込めるパートナーを選ぶとよいでしょう。
まとめ|防災のための無電柱化は道路機能と設計実務の両方から考える
無電柱化は、景観を改善するためだけの施策ではありません。地震や台風による電柱倒壊や電線の垂下を防ぎ、道路閉塞のリスクを軽減することで、緊急輸送、救命・救急、道路啓開、復旧活動を支える防災施策としても重要な役割を持っています。
一方で、実際に無電柱化を進めるためには、地下埋設物の状況を把握し、電線共同溝のルートや特殊部、地上機器、沿道への引込みなどを検討するとともに、道路管理者や各ライフライン事業者との調整を進めなければなりません。
重要なのは、「防災上、無電柱化したほうがよい」という必要性を示すだけで終わらず、道路や地下空間の条件を踏まえて、実際に整備できる設計へ落とし込むことです。
メトロ設計では、電線共同溝をはじめ、道路や地下埋設物など地下インフラに関する設計に対応しています。
防災・国土強靱化の観点から無電柱化を検討しているものの、「どの区間をどのように整備できるのか」「地下空間に設備を収められるのか」「関係事業者との調整を含めてどこから検討すべきか」といった課題がある場合は、計画の早い段階からご相談ください。
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長年の知識を生かしたマネジメントで、住民の方と施工事業者との架け橋となるような、建設コンサルタントを目指しています。
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