メトロ設計、SBT認定取得!| SBTとは?企業が取得するメリット・メトロ設計の取り組みを解説【実例紹介あり】
今、気候変動や環境問題が地球全体の社会の大きな関心を集めています。
各国の企業にとって、これらの問題解決の取り組みはもはや欠かせません。
その取り組みは形だけの「自己満足目標」ではなく「科学的根拠」による整合性が求められる時代へ移行しています。
はじめに
近年、気候変動・環境問題が大きな社会的課題となっています。
中でも、以前から問題視されている温室効果ガス排出による地球温暖化は深刻な気候変動・環境問題を引き起こします。
これらの課題に対して各国が関心を向ける必要があり、企業経営においても各社の取り組みは外部から大変重要視されています。
例えば、ESG投資やサステナビリティ、SDGs、そして科学的根拠に基づく目標設定「SBT(Science Based Targets)」があげられます。
また、インフラに対する設計の現場でも、この問題は大変重要です。
最近では環境配慮が入札・評価項目に組み込まれ、加点評価の対象にもなっています。
本記事では、科学的根拠に基づくSBTの重要性、取得による企業へのメリットやメトロ設計の実際の取り組みまでを詳しく解説します。
SBT(Science Based Targets)とは?
SBTの目的と科学的根拠
SBT(Science Based Targets)とは、「”科学的根拠に基づいて”パリ協定(※)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標に企業が設定する温室効果ガス(GHG)排出削減目標」の事です。
※パリ協定:2015年に採択された削減目標。先進国・途上国を含む全ての参加国が産業革命以前からの気温上昇を1.5℃に抑えることを目指すこと
SBTは”科学的根拠に基づいて”パリ協定の目標を達成する必要性があります。
科学的根拠が必要とされる理由は、下記2点が挙げられます。
①設定目標が有効であるかジャッジするため
企業が設定する温室効果ガス排出削減目標が「気候変動対策として十分か」どうか、科学的知見を用いることで有効性の算出ができます。
科学的根拠がなければ、その目標は気候変動対策としてどれぐらい効果的かが不明なだけでなく、企業の単なる「努力目標」「自己満足」に留まってしまいます。
気候変動対策としての貢献性かつ有効性をジャッジするためには科学的根拠が欠かせません。
②投資家や顧客からの信頼獲得
「ESG投資」が世界中で拡大しており、投資家が重視するうちの一つに企業の気候変動対策や環境問題対策が挙げられます。
これらへの対策として、SBT認定取得を通じて示す事でリスクの削減や信頼が可能となり、企業が事業継続を安定して行える持続可能性を表します。
SBTが科学的根拠に基づいた信頼性の高いものであるという証明が、投資家や顧客から企業への信頼を獲得することに繋がるのです。
これらの理由から、今SBT認定を取得する企業が急増しています。
SBT認定取得によるメリット
企業のSBT認定取得には、例えば下記のメリットがあります。
・投資家によるESG投資の呼び込み期待:SBT認定取得により自社の事業持続可能性をアピールでき、高い評価を得られESG投資を期待できる
・顧客:契約や注文などリスク意識が高いため、取引先に信用としても高い目標や取り組みを要求する。SBT認定取得により顧客の声に応え、取引におけるリスク低減や売り上げの機会増加につながる
・社員:自社の活動を誇りに思える、結果として社会に貢献できていると感じられる
・社会的評価:入札時の加点評価

中小企業版SBTの存在
中小企業版SBTとは
SBTには中小企業版が存在します。
中小企業版SBTは条件が簡略化され、通常版に比べ比較的取得がしやすくなっています。
ただし、中小企業版SBTに申請するためには企業が下記の必須・追加条件に当てはまる必要があります。
【必須条件】
・scope1およびscope2を合わせた二酸化炭素排出量が10,000 t/CO2e 未満
・事業分類が金融機関、石油・ガス部門でないこと
・親会社の事業が、通常版SBTに該当しないこと
【追加条件】
・パートを含み、従業員が250人未満
・売上高が5,000万ユーロ未満
・純資産が2,500万ユーロ未満
・森林、土地および農業セクター(分類)でないこと
※必須条件のすべてと、追加条件のうち3つに該当が必要
自社が通常版・中小企業版どちらに申請して良いか分からないときは、まず上記の要件を満たすかどうかをチェックしましょう。
中小企業版SBTと通常版の相違点
中小企業版SBTでは、通常版と比べて下記の点が簡略化されています。
①目標年の選択:申請した年から5~10年の間で、目標とする年を任意選択
②基準年の選択拡大:2015年~2024年から選択
③温室効果ガス排出量の削減範囲はScope1とScope2のみ
(Scope3の削減目標は特定の基準値なし)
④申請費用が1,250/USドルと、通常版より安価
(通常版は約8~9倍ほど申請費用必要)
また、自治体によっては中小企業版のSBT認定を支援する補助金も交付されています。
例) 東京都内に本店を有する中小企業者(100社):上限額80万円
出典:クールネット東京 東京都地球温暖化防止活動推進センター
https://www.tokyo-co2down.jp/subsidy/sbtcertification
補助金をうまく活用するために、会社所在地の自治体情報を調べてみる事もおすすめです。

SBTとメトロ設計の取り組み【実例紹介】
Scope1・2の可視化~認定・掲載へのプロセス
ここからは、メトロ設計がどのようにSBT認定取得を達成したか、実際の数値や時系列に沿ってご紹介します。
メトロ設計では、数年前より環境問題対策の一環として「SDGs」宣言を行っています。
今回、SDGsに次ぐさらなる環境問題対策として、SBT認定取得を目標に掲げました。
①初めに対象範囲・期間内の各Scope排出量データを収集・算出(2025年6月)
対象範囲:本社(東京都台東区)および足立支店(東京都足立区)
期間:2023年7月~2024年6月
Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出):ガソリン使用による排出量1.2t
Scope2(他社から供給されたエネルギーの使用による温室効果ガスの関接排出):電気使用による排出量20.1t(38,951kwh)
Scope1とScope2を合わせた温室効果ガス排出量は21.3t/年でした。
これらの結果を基に、メトロ設計のSBT設定は
短期目標:「温室効果ガス排出を2030年までに42%削減」
長期目標:「2050年までにネットゼロを達成」としました。
※ネットゼロ:温室効果ガスの排出量を最大限削減し、削減しきれない部分を森林による吸収で相殺し、実質ゼロにすること。
②申請フォームに必要項目やSBT目標を入力し、SBTiへ提出(2025年7月)
③SBTiより承認を受け、中小企業版SBT認定取得(2025年8月)
④SBTiのHP内ページ(ターゲットダッシュボード)にメトロ設計の会社名・SBT目標が掲載(2025年9月)
出典:Science Based Targets Target dashboard
https://sciencebasedtargets.org/target-dashboard
上記のプロセスを経て、メトロ設計ではデータ収集からSBT認定取得まで約3か月で達成しました。今後はこのSBT目標に対して、SBTiによる検証が都度行われます。

SBT認定取得後と2030年に向けて
しかし、SBT認定は取得して終わりではなく、ここからが始まりです。
SBT認定取得後は、温室効果ガス排出量の報告が毎年要求されます。
目標年までに掲げた削減率を達成するためには実現可能かつ具体的な改善・対策を考える必要があります。
メトロ設計では、SBT認定取得以前より”社用車を持たず、移動には交通機関を使う” “こまめな電気・エアコンのOFF” など、意識して温室効果ガス排出対策を行ってきました。
また、本社ビルは平成26年度に 「東京都環境局 中小低炭素モデルビル」として認定を受けており、高い省エネ性能を持っています。
しかし、より高い削減率を目指すには、”ビル内の老朽化した室外機やエアコンなどの設備を入れ替え高効率設備化””蛍光灯をLED機器に交換”など設備投資へ取り組む事も必要になっていくでしょう。
まずはできる事から一つずつ進めていき、目標年である2030年に向け、社員全員が意識して削減を行っていきます。

まとめ
SBTは形式上だけの目標ではなく、「科学的根拠」によって企業経営の未来を左右する重要な目標です。
何から取り掛かるか迷ったら、まずは情報収集や自社の状況を把握することから始めましょう。
例えば、
・SBTiのHP内ターゲットダッシュボードで、各企業がどんなSBT目標を設定しているかを検索する
・自社の事業分野がどのセクターに所属するか、中小企業版SBT認定に申請できる条件に当てはまるか確認をする
・自社内のScope1~3によってどれぐらい温室効果ガス排出に繋がっているか計算してチェックする
・自社内でSBTについて研修を行い、社内全体での理解や浸透を図る など。
世界各国の企業がSBT認定を取得しており、中でも日本はそれまでのイギリスを抜き世界最多となっています。(2024年時点)
今後、ますますSBT認定取得の数は増えていくでしょう。
しかし、取得だけで満足せず各企業の設定した短期・長期目標の達成を目指し、環境に対する配慮を続けていかなければいけません。

当社が手掛ける水道・無電柱化など各事業に対しても、環境への配慮が求められます。
例えば東京都が発注する案件の契約書には、「環境により良い自動車利用」に関して明記されており、
・ディーゼル車規制に適合していること
・自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法に対応していること
が書かれています。
また、他にも考えられるものとして
・再生材料の活用およびリサイクル計画書(案)の作成
・施工計画において低騒音機械の使用の提案
なども必要となるでしょう。
地下に張り巡らされた水道管の更新や布設、無電柱化などの作業は工期が長期にわたります。
工期が少しでも短縮できれば、使用する機材・自動車のCO2排出量が削減でき、環境負荷の最小化に繋がります。
工期短縮を可能にするためには、高い技術力による最適な設計や施工図などが不可欠です。
ぜひ、創業60年以来設計に専心してきた私たちメトロ設計にお任せください。
積み上げてきた数々の実績と、信頼、高い技術力を持つメトロ設計が効率的・円滑な施工実現をサポート、伴走します!
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