ABW化の成功事例|フリーアドレスとの違いと、社員満足度86%を実現した方法

公開日 2026.1.21
更新日 2026.1.29
社員がより生き生きと、かつ効率的に働けるオフィスづくりにお悩みの経営者様、ご担当者様へ。
ABW化プロジェクトをあなたの会社でも始めませんか?

本記事では、創業60年超の設計会社がABW導入に取り組み、
“社員満足度86% “という成果を出した実例をもとに、
フリーアドレスとの違いやABWを失敗させないための考え方・実践ステップを解説します。

ABW導入を成功させる鍵は「意識改革」です。
メトロ設計でのABW化が起こした変化と結果を、実施ステップや固定席から選択制へのためらい、 現場の混乱など実際にあった課題と共にご紹介します。


はじめに


今、多くの企業が働き方の再考をしながら壁にぶつかっています。
オフィスのフリーアドレス化をしたものの、「結局みんな同じ席に座っている」 「Web会議ばかりで、わざわざ出社する意味が見出せない」という失敗談が後を絶ちません。

その解決策として注目されているのが「ABW(Activity-Based Working:活動基準型ワークスタイル)」です。

ABWは単なる「フロアのレイアウト変更」ではなく社員一人ひとりの自主性を引き出し、結果的に「生産性を最大化させる経営戦略」と言えます。

しかし、新たな仕組みの導入は、一筋縄ではいきません。
メトロ設計においてもABW化は多くの課題に直面しました。
例えば、社員からの不満、ルール策定での議論、運用後の管理など…課題は多岐に渡ります。

本記事では、私たちが自社のABW導入プロジェクトで実際に経験した「4つのステップ」と、そこで直面した「3つの大きな課題」、そして課題に対する解決策をご紹介します。

働き方改革を「形式」だけで終わらせたくない経営者、人事・総務ご担当者の方々、どうぞ本記事をお役立てください。

メトロ設計はABWの本質理解と最大限の効果を引き出します。お気軽にご相談ください。


ABWとフリーアドレスの決定的な違い




近年、固定席を廃止しフリーアドレスを導入する企業が増加しています。
しかし、多くの企業が「フリーアドレスを導入したが失敗した」と口にする原因は、ABWとの本質的な違いを理解していないことにあります。

フリーアドレスは単に「自席を固定しない」という座席管理の方法に過ぎませんが、ABWは「今、自分が行う業務に最も適した場所を自ら選ぶ」という自主的な行動選択に主旨を置いているのです。

例えば
・集中して資料を作成したい時 : 「集中ブース」 
・ミーティングやアイデアを出しあう時 : 「打ち合わせスペース」
・機密性の高いWeb会議 : 「完全個室」

など、その時の自身の業務・計画に合わせて作業環境を使い分けることで、パフォーマンスを活性化、さらにアウトプットの質を最大化させることがABWの本当の目的です。

「自己決定権」が社員の満足度と効率性を上げ、結果として組織全体の生産性を向上させる事ができます。


ABW導入決定となった経営的背景


メトロ設計がABWを導入した背景は、今後、より求職者・社員から「選ばれる企業」となるためにオフィス環境を見直す必要があったためです。

テレワーク・フレックスタイム制を2021年に導入、実施しているものの、社会的に個々のライフスタイルに合わせ働く事が当たり前になっています。

今、オフィスの役割は「単に事務作業をする場所」から「効率・生産アップをさせる場所」へと進化しなければいけません。

自社内でのABW導入前は、下記のような課題が見られました。
・他部署とのコミュニケーション不足
部署ごとにデスク一帯が分かれており、チーム内の連携は深い一方、他部署とのコミュニケーションが発生しづらい

・社員数の増加によるデスクの不足
メトロ設計では事業拡大を目指し、毎年社員の獲得を増やしています。
しかし、フルリモートワーク社員の固定席も設置したままであることや、デスクの有効利用ができておらず、席数が不足しかける

これらの問題を解決し、社員を第一に考えた働き方ができるABW化を目指して社内で導入が決定しました。


メトロ設計ABW化への4ステップ | 成功の鍵となるポイントを紹介



Step 1. 計画設定と目的固め


本プロジェクトは、当社建築チーム所属メンバー間での発案・議論からスタートしていきました。
「フリーアドレスで満足せず、ABW化を目指す」という方針のもと、下記計画と実行をしました。

・固定席⇒ABWへ社員のチェンジマネジメント(意識改革)の徹底

・段階的な導入プロセスの策定
3段階に分けた導入、最初はフリーデスクから始める

・レイアウト設計・ベンダー選定
相見積もり:計4社中、コストパフォーマンスおよびデザイン性からA社へ決定

まずは何のためにABWをするか明確な目的・計画、見通しを持つことが重要です。
これに基づく事で、途中で軸がぶれたり判断に迷う事なくプロジェクトを円滑に行う事ができます。


Step 2.コンセプトとスペース策定 | 自社に置き換える


次に目的や計画を基にレイアウトやゾーニング、コンセプトなどの構想を行いました。

一般的なABWのカテゴリは大きく3つに分かれます。

・個人活動:一人で集中作業する際のスペース(集中ブース、個室)

・コラボレーション活動:チーム内でのミーティング、打ち合わせなど対人コミュニケーションが必要な時のスペース(ミーティングスペース、オープンスペース)

・その他:一息つきたい時、専門作業を行う時のスペース(リフレッシュエリア、ソファエリア)

これらを自社での作業と想定シーンに置き換えてイメージしていきましょう。

【メトロ設計の作業内容と想定される必要スペース】
・集中して設計作業を行う:個人活動
視線や気配を感じにくい、集中スペース

・少人数やチーム内での打ち合わせが必要:コラボレーション活動
モニターを使いながら対面で打ち合わせができるソファ席(通称:ファミレス席)

・資料整理、成果品製本などの作業:その他
大きなテーブルを使い、書類を広げて作業できるオープンスペース

その日ごとの自身の業務により適した場所は異なります。
「個人活動」「コラボレーション」「その他」の3本柱を中心にゾーニングする事とし、プロジェクトを進めました。

Step 3.土台となるソフト面整備


「場所が選べる」状態を作るには、デスクやスペース(ハード面)だけでなくクラウド環境(ソフト面)の整備が不可欠です。
メトロ設計はソフト面整備において下記のシステムとルール策定に注力しました。

【システム変更】
・クラウドPBX(電話システム)の導入
全社員が場所の制限なくPC、携帯で電話を受けられるよう電話システムの環境整備

・無線Wi-fi 設置完了
デスクだけでなく、フロアのどこにいてもWi-fiを利用できるようになりました。
また従来はデスクごとに有線が引かれ、それによる複雑なコード配線や絡まり・見た目を損なう課題がありましたが、解消しています。
すっきりしただけでなく足元の安全性も確保されました。

【ルール・マナー策定】
・書類の電子化(ペーパーレス)
必要書類を積み上げたり手元に置く事を原則禁止。
電子化する事でテレワーク中の社員も出社せず自宅で作業ができるため、ABW化の効果がさらに期待できます。

・席の占有禁止、個人所有物はロッカーへ保管
同じ席を暗黙的に独占は禁止。個人ロッカーに私物を入れる事が前提のため、省スペースで作業が可能です。
また、快適に使用するため退社時にウェットティッシュでデスク清掃を義務付けています。

ソフト面をしっかり整えてこそABWが形式だけで終わらず、本当に効果的な働き方改革となるのです。

Step 4.チェンジマネジメントの徹底



最後に、ここが最も重要なステップです。
ABW成功の鍵は、「チェンジマネジメント(意識改革)」が一番重要と言えます。


ただ社内で決定されたから従う、という他人事ではなく自分たちが働きやすいように、自分事として受け入れる必要があります。
そこでプロジェクトチームは次の2点を実施し、社員全員がABWを前向きに考えるために「ABWへの意識改革」をメインとして行いました。

コンセプトをしっかりと説明
各スペースの利用想定、ゾーニング、座席配置の理由など全員が理解できるよう、ポンチ絵やBIMの駆使で視覚的な理解

※BIMについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
【図解あり】BIM/CIMとは?言葉の意味・メリット・活用方法を初心者向けにわかりやすく解説

BIM/CIM活用事例|現場の生産性を上げた成功事例と取り組みについて紹介します

・段階的なABWの実施
1.部署ごとで席の移動→2.部署内で自由な席を選択→3.ABW開始

まずはフリーアドレスから始め、雰囲気やルール、変化に馴染ませていく事で、従来と180°違う働き方であっても受容が可能となりました。


ABW導入プロジェクトで直面した「3つの課題」


①:プラスへの意識改革の難しさ


社内で導入されたからといって、なんとなく席を選んでいるのではABWの利点を生かせていません。
ABWの真の目的は、社員それぞれが主体的に場所を選び効率性・生産性をアップさせる事です。
そのためには不安感や不満を吸い上げ、導入自体を社員にとってのプラス要素に変えていく事が難しい点でした。

【ポイント】
当初、一部の社員からは固定机の私物整理が面倒、席の選択、システムへの戸惑い・不安の声もありました。
しかし定期的に情報やマニュアルを発信し続け、プロジェクトチームが率先してお手本やレクチャーを行う事で安心感・満足感が生まれていきました。

②:予算・要望の絶妙なバランス調整



メトロ設計では8F・9FともにABW化が完了しています。

社員数、スペースの広い8Fフロアでは全体予算のうち約7割、その後実施した9Fは約3割のバランスとなりました。
この限られた予算内で寸法・機能性・インテリア性を兼ね備えた家具を探し出す事がとても大変な作業でした。
また、9Fは設計職以外の社員が使用しているため、他部署の使い勝手・要望と予算の調整が難航な部分です。

【ポイント】 知名度や価格の安さで家具会社を決めるのではなく、総合的なバランスを考慮してチーム全体で検討をしましょう。
質感や特徴は実物と画面では異なるため、問い合わせや家具展示会などがあれば行ってみる事をお勧めします。

また、他部署の要望はしっかりとアンケートやヒアリングで吸い上げておきましょう。
「これはできない」の一点張りではなく、家具会社への細かな相談や、代替案を用意しておくなど双方の意見のすり合わせこそが円滑に進められるポイントです。

③:想定外トラブルへの備え



導入から完了の間、家具の搬入遅延、部品不足など想定外の問題も発生しました。

・家具の出荷遅れ、船の欠航により搬入が1か月遅延

・棚の補強パーツが同梱なし

・設置予定の家具が梁下へ収まらず再度検討、打ち合わせ

【ポイント】
全体の完了まで余裕を十分に持たせた工程計画をします。
搬入を終え、組み立ての段階で問題が露呈する事も多いため、時間や日程変更など自社側で慌てずトラブル対応できるよう、密な情報共有を欠かさず意識しましょう。


社内アンケートで判明した社員の声と課題点




ABWは実施をして、終わりではありません。
繰り返しPDCAを回し続け、不満や不十分に対し改善を行っていく必要があります。

そこでメトロ設計では社員・会社全体にどのような効果をもたらしたかアンケートを数回集計しました。
全体の総括、要点は下記の結果となりました。

【総括】
ABWの前提となる「フリーアドレスにしてよかった」という設問に対し、肯定的意見(とてもそう思う+どちらかと言えばそう思う)が合計86%に達している。
社員の多くがフリーアドレス化に好意的であることを実感

【良かった点】
・物理的な環境面(デスクの数やゾーニング)ではほとんどの社員が満足している

「座席数は十分確保されている(97%)」「業務に必要なスペースを確保できている(90%)」

・他部署との交流が促進されている
「他グループとのコミュニケーションが増えた 」への肯定的な回答(計86%)

・生産性向上という目的が一定程度達成
「ABW導入後、作業効率が向上したと思う」へ肯定的回答(計72%)

【問題・今後の課題点】

・同部署内の連携を円滑に行えるか
「同じ部署社員の出社状況・座っている位置を把握できている」への肯定的回答が56%であり、否定的回答は44%とあまり差がない。

・個人、チームごとなど共有の収納場所が不足しがち
否定的回答(計31~38%)と、約3割は収納問題で不満を持っている。
特に「個人の」保管場所については、他の収納場所より不足していると認識傾向にある。
(※ただし、こちらは資料のデータ化により改善が見込める)


チームメンバーに質問|振り返りと今後の改善


ABW化プロジェクトを終えたチームメンバーに、総括と反省点についてインタビューを行いました。

「メトロ設計では初めてのABW化プロジェクトであったため、家具会社へ依頼する部分が多くあった印象です。
反省として、工程の中で相手任せではなく、自社でできた部分があるのでは?と感じる点もありました。
例えば、作業台として使用する机など、インテリア性にこだわりがない物は中古品・低価格なものを自社で探すことで費用を抑えられた可能性があると思っています。(自社で行える部分は取り組む方が早く、安い) 」

今後、自社実施部分・依頼部分の洗い出しと棲み分けを徹底し、フォーマットやマニュアル作成などノウハウ向上が重要です。
このサイクルが上手に回ることで、工期と費用削減に大きく繋がるでしょう。

当社ではABW化ノウハウのさらなる蓄積と経験・実績を基にしたコンサルタントを目指していきます。


まとめ



今回の実績が示す通り、ABW導入の一番の成功の鍵は「チェンジマネジメント(意識改革)」です。

そのためには、下記のポイントを押さえましょう。

・コンセプトをしっかりと説明:Before⇒Afterの可視化でイメージしやすく

Before

After(プロジェクトチームにてBIMを使用し作成したイメージ図)

・無理のない移行: 3段階のフェーズ移行で社員の意識を少しずつ変えていく

もし固定席に満足している環境であっても、ABWの導入でオフィスは劇的に変わります。

「自社にはまだ早い」「伝統的な社風だから難しい」と感じる前に、まずは現在のオフィスを見直し、有効活用度をチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか?

この記事を読んで
「自社でも検討してみたいが、どこから手を付ければいいか分からない」「社員の働きやすさ・オフィス環境へのアドバイスが欲しい」と感じたら、まずはメトロ設計までお気軽にご相談ください。
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