地下鉄トンネルの工法・技術

公開日 2023.10.27
更新日 2024.3.7
普段、みなさんが通勤や通学で使う電車は、たくさんの人を運ぶ大事な交通手段となっています。 特に首都圏、東京では至る場所に線路が張り巡らされており、地上を走るだけではなく地下を利用した地下鉄も非常に重要な役割を果たしています。 私たちが普段当たり前のように使っている地下鉄ですが、その工程は地上と違い地下を掘り進めていくという、大変な作業が行われています。 暗く、見通しの悪い地下空間の中でいったいどのようにしてトンネルを掘り進めていくのでしょうか? そのためにはいくつかの工法がありますが、中でも特に主流なものが開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の2種類です。  

【開削工法とは】

もっとも一般的な工法とされ、日本における初期の地下鉄工事は、地質が似通っている事からベルリンの工法を参考にしています。 土留めや防水技術の進歩もあり、これまで困難だった軟弱地盤でも開削が可能となり、工期の短縮に繋がってきました。道路下や駅部分など、地表から浅い場所にトンネルを作るときに用いられる工法です。 出典:開削工法 | 鉄道用語事典 | 日本民営鉄道協会 (mintetsu.or.jp) <施工順序>
  1. 地下鉄構築予定位置の両側に土留壁を施工して工事用の仮壁を作ります。
  2. 土留杭に桁や,覆工板をかけて仮路面を作り路面交通に支障がないようにします。仮路面の下で地下の埋設物(上下水道,ガス,電気,電話線等)を防護しながら,必要な深さまで掘り進めます。掘削土砂は,地上部の工事作業帯の中でダンプトラックに積み込んで運び込みます。
  3. 地下鉄の構造物を作ります。鉄筋の運び込みや,コンクリートの打ち込みなどは,地上部の工事作業帯から行います。
  4. 地下鉄構造物が出来上がった後は,土砂を埋戻し,道路を元通りに復旧します。
出典:京都市交通局:地下鉄のつくり方-開削工法 (kyoto.lg.jp)
日比谷線入谷駅前
地下鉄:日比谷線 入谷駅前の様子
覆工板(地上から)
路面に覆工板が置かれている様子
覆工板(地下から)"
地下から見た上部の様子(覆工板)

【シールド工法とは】

開削工法と異なり、前面を盾のようなもので押さえながら、まわりを鉄筋コンクリートなどで囲めてトンネルを完成させる工法です。 「盾」という意味を持つシールドマシンは茶筒のような形をしており、前面には回転する巨大なカッターがついています。シールドは円型、半円型、馬蹄型、角型など様々な種類があります。 地下鉄工事では円型と半円型で、大きさは直径約5~7mの単線用と、直径約8~10mの複線用の2種類がよく用いられます。 シールド工法は、発進用のたて坑を基地とし、そこからシールドマシンを入れ、モグラのように穴を掘り進めます。掘削が終わった後、コンクリートブロック(セグメント)をマシンの中で組み立てていきトンネルをつくります。 この工法は軟弱地盤や深いトンネルも開削できるため、最近では主流となっています。 2008年に開通した地下鉄副都心線の工事では、楕円形のトンネルを掘ることができる複合円形シールドマシンが登場し、これまで2台のマシンが必要だったところを一台で築造することができるようになりました。 出典:一般社団法人日本民営鉄道 シールド工法 <施工順序>
  1. 掘進機を発進させるための立坑を造り,その中に掘進機をおろします。
  2. 掘進機の前面の土を掘削しながら油圧ジャッキで前進させます。
  3. 掘進機の後部でセグメント(鉄筋コンクリート製又は鋼製)を組み立ててトンネルを造ります。
出典:京都市交通局:地下鉄のつくり方-シールド工法 (kyoto.lg.jp)  

【地下鉄のさらなる発展】

ここまで、地下鉄が利用するトンネルの工法や、手順などに関してご紹介をしました。 最近では、下記の2路線での延伸をシールド工法で進め、2030年代半ばの完成を予定しています。
  • 地下鉄8号線延伸(有楽町線) :豊洲~住吉間
  • 南北線延伸:品川~白金高輪間
地下鉄8号線(有楽町線):豊洲~住吉間では、新たに豊洲~東陽町と東陽町~住吉間に「枝川駅」「千石駅」(※いずれも仮称)の2つの中間新駅を設置する予定です。 路線延長は約4.8km、総建設費は約2690億円とされています。(うち一部を国・都、江東区が負担)   【期待効果】
  • 所要時間の減少 →住吉駅から豊洲駅への移動が約20分(乗り換え2回)から約9分(乗り換え不要)となる
  • 東西線・および周囲路線の混雑緩和に寄与 →東西線の最混雑区となる木場~門前仲町間の混雑率が約20%減少の見込み →開発計画が進む臨海部と、東京スカイツリーなど観光エリアのアクセスが容易になり、一部の路線へ集中している交通量を分散させる
出典:有楽町線延伸、ルート案を公表 千石駅と枝川駅を新設 – 日本経済新聞 (nikkei.com) 一方、南北線延伸:品川~白金高輪間は、路線延長は約2.5km、直線ではなくあえてカーブを描く形状にしています。理由としては、目黒通りや環状4号線など都道の地下を利用するためです。建設費用は従来想定の800億を超えた1310億円となっています。 走行ルートでは地下鉄の白金台、高輪台駅などを掠めるものの、両駅への停車は行いません。 【期待効果】
  • アクセス利便性の向上 →東海道新幹線やJRが乗り入れ、建設中のリニア中央新幹線の始発駅となる予定の品川駅から六本木・赤坂方面など都心部へのアクセスが容易になる。
  • 所要時間の減少 →例えば南北線の「六本木一丁目」から品川駅までは約10分短縮され、9分となる見込み
今回にあたって、都内で地下鉄の新区間開業をするのは2008年の副都心線以来(池袋~渋谷間)となります。 また、政府では2030年に訪日客を6000万人とする目標を掲げており、これら2路線の延伸は、観光需要を回復させていく上で大きな意味を持つと言えます。 出典:メトロ有楽町線・南北線の延伸計画、動き出す…新玄関口「品川」アクセス向上へ : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 地域住民からも延伸によるメリットへの期待が高まっており、ますます利便性が広がる地下鉄網の発展に今後も目が離せませんね。   さて、11月は「近接施工」に関してご紹介します。近接施工とは、地下空間や地下鉄周辺の開発・利用などにおいて、既設構造物に近接した場所での施工方法です。 特に限られた空間が多い東京では重要な問題となりますね。 それでは次回をお楽しみに!  
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