埋設物調査(地中埋設物調査)とは?│調査方法から撤去まで詳しく解説
道路、歩道などにある地下インフラ(上下水道の更新や耐震化・電線類地中化)工事を行う際、また家や土地を購入するなどの不動産取引を行う上で、埋設物調査(地中埋設物調査)は非常に重要な役割を担っています。
これらの工事を行う際や、取引を行う土地に隠れた問題が潜んでいないか事前にチェックし、トラブルが起きるリスクを減らしましょう。
この記事では、以下の情報を提供しています。
- 地中埋設物調査の重要性
- 地下インフラ工事や不動産取引時に、なぜ埋設物調査が必要なのか
- 撤去が必要ないケースとは
- 埋設物調査を行うための方法
この知識を身につけておけば、地下インフラ工事や不動産取引に安心して取り掛かることができます。
埋設物調査(地中埋設物調査)とは?
埋設物調査(地中埋設物調査)とは、地中に存在する埋設物の有無、正確な位置、種類、サイズなどの詳細を明らかにする作業です。
埋設物は人工物と自然物に分けられ、以下のようなものを指します。
〇人工物…建築資材や構造物、排水管、浄化槽、文化財に該当する遺跡類が含まれます。例えば、建物の解体や改築で発生したコンクリート片、廃材、古い管類などです。
〇自然物…大きな岩や石、湧き水など、地形や地質に関連する自然発生の物質が含まれます。
これらの地中埋設物は、建設プロジェクトや土地の利用に影響を与え、建築行為を妨げる可能性があるため、場合によっては撤去が必要です。
特に都市部や既存のインフラが密集している地域では、新たな建設や改修を行う際、この調査が欠かせません。
どんな時に埋設物調査が必要?
では、どのような場合において埋設物調査が必要なのでしょうか。 シュチュエーションごとに解説します。
(1)道路・歩道工事を行う場合
道路・歩道工事、特に道路整備や改良においても、事前に埋設物調査を行います。
道路・歩道の整備や改良工事では、地中に存在する既存の埋設物によるリスクを事前に把握する必要があります。埋設物調査を通じて、地下にある管類やケーブル、その他の構造物を特定し、工事中の安全を確保しなければなりません。
事前調査を怠ると、工事の遅延やコストの増加、さらには安全上の問題が発生する可能性があります。道路工事における埋設物調査は、計画の効率性と安全性を保証し、長期的な道路の品質と維持を支えるために極めて重要です。
(2)無電柱化を行う場合
無電柱化とは、電線や通信ケーブルを地中に移設することです。
日本では、災害の防止、安全・円滑な交通確保、良好な景観形成を目的として、道路の無電柱化事業が推進されています。
電柱を撤去し地中にケーブルを移設するには、まず既存の埋設物の正確な位置を把握しなければなりません。ケーブルや管類の敷設に影響を与える可能性のある埋設物を特定し、計画の安全性を確保するために、無電柱化を行う場合には事前の埋設物調査が極めて重要です。
(3)家などの建築物を建築する場合
家や、公共施設、オフィスビルなどを計画する場合は、必ず建築前に埋設物調査を行いましょう。
例えば、地中には以前の建築物の基礎や廃棄された管類など、予期しない埋設物が存在する可能性があります。 建設開始後に埋設物が発見された場合、建設プロジェクトに遅延や追加コストが発生したり、地盤の強度に影響を与える埋設物であれば、建築物の安全性に重大なリスクが生じる可能性があります。建設地の安全性や建設プロジェクトの円滑な進行のためにも、事前に埋設物調査を行ってリスク回避をしましょう。
(4)土地売却の場合
埋設物調査を行うことにより、土地売却時の法的なトラブルを避け、売買契約の透明性を保つことが可能です。
土地に埋設物があれば、売主はそれを買主に伝える義務があり、これを怠ると法的な問題に発展する恐れがあるので注意しましょう。
隠して売買が進行し、後に問題が発覚すれば、売主は法的責任を負うことになり、契約解除や損害賠償の請求につながる恐れがあります。また、埋設物の撤去には追加費用がかかるため、売買価格に影響を及ぼすことも考えられます。
そのため、売主は事前に埋設物の有無を確認し、存在する場合は買主に適切な情報を提供しなければなりません。
トラブルを未然に防ぐためにも、土地の売買時には事前の埋設物調査が不可欠です。
撤去不要なもの
埋設物調査の結果、すべての発見物が撤去を要するわけではありません。例えば、地中に存在する自然物や文化財に該当する遺跡は、撤去せずにそのまま残されることがあります。
土地の歴史的、または文化的な側面を反映している可能性を持つ遺跡は、保護する価値があるとみなされ保護対象となりますので、撤去してしまわぬように注意しましょう。
また、一部の建築資材や構造物も、新たな建築計画に影響を与えない場合は、そのまま地中に残す場合があります。
まず埋設物調査をしないことには最適な埋設物の扱いが判断できないため、さまざまなリスクを避けるためにも、事前に調査を行いましょう。
埋設物調査をしないとどんなリスクがある?
埋設物調査を怠ると、工事の際に既存の地中化された埋設管を損傷・切断したり、地中に存在する埋設物によってさまざまなリスクや法的問題が生じる可能性があります。
特に道路・歩道工事での埋設管損傷・切断は、工事路線付近の住民の生活に大きな影響を与えます。また、建設プロジェクトや土地の売買の際、未発見の埋設物が後に問題となった場合、建築工事の遅延、追加コストの発生、さらには法律上の責任問題などが発生する可能性もあります。
別の項目で説明した通り、建設途中に埋設物が発見されると、工事が中断され、計画の見直しが必要となる場合があります。
また、売主が土地の埋設物の存在を知りながらこれを開示しなかった場合、買主からの損害賠償請求の対象となることもあります。
埋設物調査は、潜在的なリスクを回避し、法的問題を未然に防ぐ点で重要であるため、必ず実施しましょう。
埋設物調査の方法
埋設物調査の方法は多岐にわたり、地中の状況を正確に把握するためにさまざまな技術が利用されます。
1. 地歴調査
地歴調査とは、土地の過去の利用歴や歴史を詳細に調べることで、埋設物の可能性を探る方法です。この調査は、過去の建築記録、古い地図、歴史的写真など、さまざまな資料を分析することによって行われます。
これにより、その土地にかつて存在した建物や構造物、そしてそれらが今も地中に残っている可能性についての手がかりを得ることが可能です。
地歴調査は、土地の過去の様子を理解し、現在の開発計画や建設作業に影響を与える可能性のある隠れた問題を特定するのに有効とされています。
2.埋設管調査
埋設管調査とは、各種台帳や記録、地図などを詳細に分析することで埋設管を探る方法です。
地中に埋められているガス管、水道管、通信線などのインフラ設備の位置と状態を特定するのが目的です。
都市部や既存のインフラが密集しているエリアでの工事において、埋設管調査は特に不可欠です。
3.試掘調査
試掘調査とは、小規模な掘削を行い地中の実際の状況を確認する方法です。
建設予定地の地中埋設物の破損を防ぐために行われます。
特に大規模な建設プロジェクトや複雑な地下構造がある地域での工事において、計画の見直しや追加コストを防ぐために実施されます。
4.地中レーダー調査
地中レーダー調査とは、非破壊的な方法で地中埋設物を探知するために使用される方法です。この調査では、電磁波を地中に送り込み、その反射波を分析することで、地中の構造物や埋設物を特定します。
地中のパイプ、ケーブル、その他の埋設物の位置や深さを特定するのに特に有効です。
地中レーダー調査の利点は、地中構造を正確に把握しながら、土地を掘り起こす必要がない点にあります。迅速でコスト効率が良く、広範囲の地域を調査する際にも適しています。そのため、建設計画、土木工事、考古学的調査など、多岐にわたる分野で利用されています。
5.ボーリング調査
ボーリング調査とは、土地の地層を物理的に掘削し、土壌サンプルを採取することで埋設物を探る方法です。
この調査は、地質や地層の構造を詳細に調べられるため、地中の固体物の存在を確認するのに適しています。特に深く埋められた物質や大規模な構造物の調査に有用であり、建設プロジェクトや環境調査など、さまざまな分野で重宝されています。
まとめ
この記事では、地下インフラ工事や不動産取引の際、隠れた問題を回避するための地中埋設物調査の重要性について詳しく説明しました。
埋設物調査が、あらゆる建設プロジェクトや土地の取引において、リスクを最小限に抑えるために不可欠なステップであり、事前調査がいかに重要であるか、ご理解頂けたでしょうか。
この知識を持つことで、道路・歩道工事の施工、不動産取引の際の安心感が増し、予期せぬリスクを回避できます。
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