鉄道近接工事(近接施工)について

公開日 2023.11.27
更新日 2024.3.7
前回では、地下鉄に不可欠なトンネルがどのように掘り進められていくかをご紹介しました。 しかし地下には、上下水道、電力・通信ケーブルなど様々なものが埋設されており、土地を最大限に活用するためには構造物同士が近い位置で施工せざるを得ません。(「近接工事」または「近接施工」。※以下、近接工事。) 一方で、列車が運行する範囲内で重機との接触による重大事故の発生も問題視されています。今回は、鉄道における近接工事を中心にご説明します。

【近接工事とは?】

近接工事とは用地に余裕がないため、隣接する既設構造物に近づいて空間を最大限利用して行われる施工法です。一般的に既存構造物の機能に重大な影響を与える危険性を持つ場所での施工が該当します。 既存構造物の機能への重大な影響は、「直接的に与える影響」と「間接的に与える影響」があります。 <直接的に与える影響の例>
  • 施工機械や資材の転倒
  • 落下等による架空電線の断線
  • 杭打ち等による埋設物の損傷
  • 工事による騒音,振動
<間接的に与える影響の例>
  • 地盤の変位、変形による損傷
出典:コリンズ・テクリスのよくある質問 鉄道における近接工事とは、列車が運行している線路やトンネルなど、構造物に影響を及ぼす範囲内において、国・地方自治体や宅地開発会社などにより行われる土木・建築工事の事です。 掘削、足場使用、また重機を使う作業などが原因で、列車の脱線や列車の運行に支障を与え、多数の乗客に影響を及ぼす鉄道事故を起こす可能性があります。 実際の事故例として、過去にJR営業線上の桁が座屈、そこに列車が突入したことによって3週間運休となりました。
実際の事故例
このような事故を防止するため、計画・設計・施工など、様々な段階で都度「近接施工協議」を行い、打合せをする必要があります。

【近接施工協議とは】

協議内では、工事を着手する前に鉄道事業者と発注者間で、主に下記の内容に関してルールや手続き、また文書の取り決め等を行います。
軌道経営者との事前協議
この協議が必須となる作業として、下記のような例が該当します。
  • 地下鉄の本体構造物・駅出入口・車庫等付帯施設から30メートル以内で近接して(地上または地下で)施工する工事
  • 地下鉄構造物上部付近にクレーン等重機を据え付けて施工する工事
鉄道事業者によって、この協議に要する期間や申請書類は違いますが、申請からおよそ1~3か月ほどかかり、書類は下記の物が一般的に必要なようです。

【鉄道事故を防ぐために】

協議と並行して、どのような対策を発注者側で行うかという点も非常に重要です。 千葉県では一般国道464号:北千葉道路建設に伴い、一部区間において成田新高速鉄道との近接工事が必要なため、下記のような対策を挙げています。 列車通過時は作業を一時中止、また変位計測器を用いて鉄道構造物の変位を随時確認するなど万全な対策を行っています。
監視の範囲 変位観測の方法 変位観測の方法
  いかがでしたか?私たちの生活に身近な存在である列車は、線路や架線などが無ければ走る事ができません。一方で、前述したように近接工事が重大な鉄道事故を引き起こし、運行やその利用客に影響を与える可能性も十分にあり得ます。 そのためにも、「発注者の対応策」や「近接施工協議」を通じて鉄道事業者と発注者の双方が合意し、安全に作業を行う事がいかに重要かを気づかされますね。  
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