無電柱化が直面する問題 ~無電柱化のデメリット?~

カテゴリ: まちづくり 無電柱化
公開日 2023.7.18
更新日 2024.4.25
快適なまちづくりへ繋がる無電柱化ですが、下記の図のように、完成までの道のりがまだまだ遠いことがデメリットと言えます。

直近の動きを見ると、都道の整備累計延長は全部で2,328kmに対し、令和2年度末時点では1,021km、全体の地中化率()は未だ44%となっています。 また、各地域での地中化率を換算した場合、23区部:62%  多摩地域:21%と、特に多摩地域での割合の少なさが目立ちます。

※無電柱化率:電線共同溝の整備がされており、電柱も撤去した場所の比率 ※地中化率:電線共同溝の整備はされているが、電柱が撤去できていない場所の比率 海外の主要都市(ロンドンやパリ、香港など)ではすでに無電柱化率が100%であり、比べると日本は大きく後れをとっています。
海外での無電柱化率が高い理由として、架空線自体の禁止や、電線の地中化が義務づけられている国が多い事、施工が簡単な「直接埋設方式」を主流としている事が挙げられます。この方式では管路を設置せず、ケーブル類をそのまま地中に埋めることで工期やコストを抑えることができる一方、メンテナンスが難しく、損傷などによる断線のリスクが高いとされています。

上記の理由から、地震・台風等の災害が多い日本では、メンテナンス性に優れ、断線リスクの低い「電線共同溝方式(無電柱化とは?無電柱化整備の方式)」を用いた無電柱化が適しており、基本的にこの方式が用いられています。
しかし、施工は簡単に行えるものではなく、なかなか整備スピードがアップできていません。 その理由はいくつかありますが、主に下記2点が考えられます。

① 無電柱化にかかる工期とコストが膨大

工期:約400mの道路延長につき約7年

すでにインフラが埋設されている地下空間へ電線共同溝を設置するためには、設計段階で複数の事業関係者との調整を繰り返し(道路工事調整会議)、場合によっては支障物の移転(支障移転)が必要です。ここまでの完了におよそ3年以上をかけ、施工段階に入ります。
その他、近隣住民への説明や地上機器の設置場所の調整など、多岐にわたる作業が行われます。 コスト:約1kmあたり約5.3億円

無電柱化とは?無電柱化整備の方式」で前述した通り、電線共同溝方式は、道路管理者と電線管理者の双方がコスト負担をし、下記の工程をそれぞれ整備しています。
  • 道路管理者:管路の用意、掘削~埋め戻しなど電線共同溝本体の施工
  • 電線管理者:ケーブル、地上機器の購入や、電線共同溝への電力・通信線引き込み
電線共同溝の整備に係る費用負担
(出典:東京都無電柱化計画 より)
このように、完了までおよそ7年という工期に加えて、約5.3億円という膨大なコストが必要である事が原因となっています。 解決のために、低コスト手法・コスト削減に向けた技術開発に力を入れていく事が求められます。
 

② 区市町村道での無電柱化が進んでいない

無電柱化は都道に限らず、区市町村道においても非常に重要な整備です。
しかし、都内の道路延長のうち約9割を占める区市町村道では、歩道が狭い・歩道の無い道路(歩道幅員2.5m未満)が大半であるため、電線類の収容や地上機器の設置が難しく、技術的な問題が残ります。
また、各区市町村が負担するコストが大きく、無電柱化整備への経験・情報不足から取り組みが困難であることも原因の一つと言えます。
よって区市町村への財政支援の強化や、技術開発の向上を高めていく必要があります。

市区町村における無電柱化の実施状況
(出典:国土交通省ホームページ より)
上記のような理由を聞いて、どのような印象を受けましたか?
全体を通して、コスト削減に向けた技術開発や、技術力の向上、財政支援の強化が必要とされる深刻な問題となっています。特に区市町村道のほとんどは歩道の幅員が2.5m未満です。これでは車との距離も近く、事故にもつながりかねませんね。
これらに対して東京都や国土交通省は、どのような考えや制度によって取り組みをしてきたのでしょうか?次回は、それらについてご紹介いたします。
私たちメトロ設計の建設コンサルティングサービスでは、60年にわたる経験を生かし、現地調査、計画、設計等の支援を行ってきました。

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